2020 Fiscal Year Research-status Report
A classification of public policy contributing to social innovation and an analysis of effect mechanism
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18K12698
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松崎 俊作 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70456143)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会イノベーション / 公共政策 / 官民連携 / 規制緩和 / 地方分権 / 地域電力システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,国内外の事例分析に基づき,社会イノベーションに貢献する公共政策の特定と類型化,各類型と地域活性化事業過程に及ぼす影響との関係のモデル化を目的とする.令和2年度は,過去2年で調査した事例から社会イノベーションに貢献する公共政策の特定・類型化を目指した.令和2年度は特に文献調査を中心に分析が可能な事例に限定して研究を実施した. これまでは,官が社会イノベーション創出の領域を作る類型のみを想定していたが,もともと民間の営利活動に供されていた領域において,社会イノベーションを生み出す公共政策の可能性を示す事例を発見した.たとえば,フランスにおいては施設閉鎖や再開発等に伴って発生する未利用地・低利用地を,「暫定利用」という形で活用する施策が採られている.暫定利用では,単に利益追求のみを目的とせず,エリアの持続可能性向上,包摂性向上といった社会的価値を意識した土地利用が設計・実施されている.日本においても,下北沢の再開発等,暫定利用の先駆例が見られることがわかったが,暫定利用を公共政策に組み込んでいる例は見られず,未だ民間の創発的取り組みにとどまっている.フランスの事例等を参考にしつつ,民間の領域を活用した社会イノベーション創出の類型化に今後取り組む必要がある. 過去2年にわたって地域電力システムを対象とした事例研究を行い,官民連携や地方分権,規制緩和等の公共政策と,その(社会イノベーションへの寄与という観点での)類型化を行ってきた.そこで,日本の地域新電力事例において,これまで調査した事例と異なる特徴を持つものを探索し,神奈川県小田原市の地域電力について文献調査と,可能な範囲でのインタビュー調査を実施した.その結果,令和元年度の研究で抽出された「民が創造性を発揮できるためのキャパシティ(不足)」という課題に対して,顧客ロイヤルティの高い地元民間企業の役割・意義を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19パンデミック(以下,コロナ禍)による影響で,海外事例調査,国際会議での発表・討議はキャンセルとなり,国内でのインタビュー調査等にも大きな制約が生じてしまったことで,当初計画より研究進捗が遅れることとなった. 当初から仮説として挙げていた類型のひとつ,具体的にはたとえば地方分権政策について,国内で有効な事例を見出だせず,ドイツの地域電力システムを調査対象として検討していたが,コロナ禍によって断念を余儀なくされた.同様に,公共政策立案段階から,社会イノベーション創出を想定していたと推定される事例についても,調査が十分に進展できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍によって海外事例調査は未だ相当の制約があるが,学会のハイブリッドまたはオンライン化などで,令和2年度は実施できなかった研究発表・討議は一部可能となりつつある.7月にはスペイン・バルセロナでハイブリッド開催される国際公共政策学会において,特に都市政策の観点で本研究の成果・コンセプトについて討議を行う計画である. また,新たに発見した仮説的類型について,日本における暫定利用の事例研究を進め,フランスの事例についても可能な限り文献調査で情報を収集することで,公共政策としての類型化に取り組む. 最後に,政策形成に関わる政治過程分析から,社会イノベーション創出に貢献する公共政策のデザインを支援する知識創出を行うために,これまでに分析した事例の中で調査が実施可能な事例について,追加の調査を実施する.令和2年度はコロナ禍によって調査を大きく制約されたが,オンラインコミュニケーションや感染対策を徹底した対面コミュニケーション等が浸透してきたことを踏まえて実行に移す計画である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により国際学会への参加,海外・国内事例の調査等が制約され,令和2年度は当初予定の計画を十分実施できなかった.そこで補助事業期間延長申請を行い,コロナ禍によって制約された活動のうち,現在可能となりつつあるもの(ハイブリッドもしくはオンライン開催となった学会への参加,国内調査等)を実施して,研究を完了することを目指す.
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