2018 Fiscal Year Research-status Report
Towars a History of the Idea of Citizenship: John Locke on the Concept of Political Membership
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18K12699
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
柏崎 正憲 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (90737032)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シティズンシップ / 政治的成員資格 / 市民と非市民 / 西洋政治思想 / 西洋社会思想 / 西洋道徳思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的との関連1: 第一の目的「シティズンシップの思想史および理論における定説の修正・刷新」との関連において、本年度の実績は、研究方法を確立し、研究範囲を大筋で確定することにあった。前年度の(申請書類内の)研究計画で提示した方法を、論文「ロックにおける政治的成員資格」および学会報告(社会思想史学会)で詳細に展開した。 重要な成果は、考慮すべき思想史的文脈を特定した点にある。第一に、社会契約説とsubjectship(臣民の地位)との関連性。第二に、古典的な市民的美徳の理念から、ロックに見られる商業的な市民意識への転換。第二の文脈は、前年度の研究計画では重視していなかった。しかし同論文では、ロックの市民意識の独創性を解明することが、国家の「成員members」と「臣民subject」にかんする彼の学説にも新たな角度から光を当てる可能性を提示した。双方の文脈に同時に着目することは、初期近代に特有のシティズンシップの概念(古典的および近代的概念のいずれにも還元されない)を解明することに寄与すると思われる。 研究目的との関連2: 第二の目的「市民/非市民の境界づけをめぐる規範的諸前提の再考」にかんして本年度のうちに成果を出すことは、当初は想定していなかった。しかし副次的成果として、日本および米国の外国人・移民政策にかんする論文および学会報告を、本年度中に発表した。これらの成果は、一次的には、現代の非正規移民にたいする政策の経験的研究である。しかし二次的には、形式的シティズンシップ(法的地位)と事実上のシティズンシップ(社会参加)との矛盾という理論的かつ思想史的な問題に取り組むにあたって、その現代的文脈の調査として、本研究にも寄与する成果といえる。 研究実施計画との関連: ほぼ第一年次の実施計画どおりに、本年度の研究を進めることができた。詳細は「現在までの進捗状況」のとおり。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集の状況: 一次資料のうち出版されているもの、および重要な二次文献を、予算が許すかぎり購入した。ロックの文献は、生前未公刊の手稿についてもかなりの部分が出版されているが、それでも手稿そのものの写しを閲覧すべきと思われるものについては、7月にボドリアン図書館(オックスフォード大学)および大英図書館(ロンドン)で実施した資料調査により、手稿の写しを手に入れている。他方で、一次文献のうち他の著者によるものは、非常勤講師として勤めている早稲田大学の図書館(EEBOにアクセス可能)で、随時取得している。こうして、必要な資料のうち大半は、すでに入手しているか、またはアクセス可能な図書館で所蔵を把握できている。 研究推進の状況: 一次文献の分析について、ロックの出版された文献は、すでにおおむね目をとおし、どの部分に詳細な分析が必要であるかの見当はつけている。他の著者によるものは、参照すべき著者の選別をおおむね完了しているものの、文献の精読は部分的にしか進んでいない。とはいえ、おおむね当初の計画どおりに進んでいると言える。 くわえて、国際学会John Locke Conference(7月、オックスフォード)、またジョン・ロック研究会(9月、日本大学商学部)、イングランド啓蒙研究会(年度中に計6回)に参加した。その成果はとくに、認識論、科学哲学、宗教思想、倫理学など、他分野におけるロック研究の成果について知見を広められたことにある。シティズンシップは、政治や社会のみならず、人間本性および道徳観にも関係する観念であるため、こうした他分野の研究成果に通暁することも、本研究において重要である。 研究発表の状況: 研究論文2本を公開し、学会報告2本を遂行した。そのうち、本研究の進展にとくに寄与したものは、研究論文1本、学会報告1本である。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集の計画: 一次文献のうちロックのものはほぼ揃えたが、出版された手稿についてオリジナルの確認の必要が生じた場合、所蔵の図書館への複写依頼をつうじて入手する。その他の著者による一次文献は、アクセス可能な図書館で必要なものをカバーできる見通し。二次文献は今後も必要におうじて購入または複写する。 研究推進の計画: 一次文献の方法的な精読をさらに進める。方法については、前述の「研究実績の概要」に記載のとおり。研究成果は、後述の研究発表に反映される見通しである。 研究発表の計画: 国際学会John Locke Conference(7月、ヘルシンキ)での報告はすでにアクセプトされている。くわえて、国内学会における投稿論文を2本、報告を2本、計画している。
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Causes of Carryover |
資料複写の執行にも使えない程度の少額が残った。翌年の物品費の補填として活用したい。
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Research Products
(4 results)