2019 Fiscal Year Research-status Report
Towars a History of the Idea of Citizenship: John Locke on the Concept of Political Membership
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18K12699
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
柏崎 正憲 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (90737032)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シティズンシップ / 政治的成員資格 / 市民と非市民 / 西洋政治思想 / 西洋社会思想 / 西洋道徳思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的との関連1: 第一の目的「シティズンシップの思想史および理論における定説の修正・刷新」との関連において、本年度の実績は、研究を大幅に進展させたことにある。7月の John Locke Conference(於ヘルシンキ大学)での報告および2本の学会投稿論文(うち1本は3月に公刊、もう1本は年度内に掲載決定済)がその成果である。あわせて副次的な研究成果として1本の論文、1本の学会報告も発表した。 本研究の目的は、古代的市民像から近代的市民権への移行が、イギリス名誉革命期において自然法理論と社会契約説にもとづく私的権利の保全を唱えたロックにはじまるという、従来の定説を再考、刷新することである。前年度までは、この定説にたいして、ロックの政治学が君主制国家の成員の観念を、「服従者(臣民)」のみならず同時に能動的成員としても置きなおした、という代替的な説明を提示できると考えていた。しかし今年度の研究の過程で、このことを究明するためにはロックの政治的教説のみならず、彼の道徳観および経済観をも視野に入れる必要があるということに気づいた。ロックにおいて、もっぱら受動的に共同体に属すると見なされてきた人民一般を、共同体の能動的貢献者としても位置づけるという転換は、人間一般の道徳的な行為能力や、人民一般の経済的な貢献(勤勉)にかんする認識の転換と連動している。この発見は上述の研究成果に反映されている。 研究目的との関連2: 第二の目的「市民/非市民の境界づけをめぐる規範的諸前提の再考」にかんしても、一定の発見があったが、これについては残りの年度において研究成果に結実させていく所存である。 研究実施計画との関連: 予定以上に研究を進めることができたと言える。前年度より多くの研究成果を得ただけでなく、前述のとおり、研究計画そのものを発展させることができたためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
資料収集の状況: おもに重要な二次文献を、予算が許すかぎり購入した。一次資料については、1月にニューヨークのモルガン・ライブラリーでロック手稿の調査をおこなった(ただし、これに対応する校訂版の刊本は入手している)。また、16-17世紀の本研究課題に関係のある著者のテクストの調査も必要となったが、これについては所属研究機関の図書館およびインターネットでアクセス可能なアーカイブをつうじて収集した。 研究推進の状況: ロックに加えて、ロック以前の時代における、本研究課題に関連する著者(エラスムス、バーンズ、ニーダム、ホッブズ、ニコル等)のテクスト調査を進めた。その成果は公刊済または掲載決定済の研究論文に反映されている。また、国際学会John Locke Conference(7月、ヘルシンキ)、ジョン・ロック研究会(9月、国際基督教大学)、社会思想史学会(10月、甲南大学)、イングランド啓蒙研究会(年度中に計4回)に参加し、研究報告をおこない、また関連分野についての知見を広めた。 研究発表の状況: 研究論文2本が公開され、1本が掲載決定となった。研究報告2本を遂行した(うち1本は国際学会)。研究成果が増えただけでなく、「研究実績の概要」のとおり、研究計画そのものがさらに発展した。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集の計画: 必要な一次文献はおおむね揃っているので、おもに二次文献を必要におうじて追加で購入または複写する。 研究推進の計画: 前述のとおり、ロックにおける政治的成員資格の観念の刷新と、彼の道徳観および経済思想における転換との関連性を、より詳細に調査する必要があることが判明したので、この主題(とくに政治思想と経済思想との関連)について、一次文献の方法的な精読をさらに進める。発展した研究計画を、具体的成果につなげることが、残りの年度の目標である。 研究発表の計画: 国際学術誌(Locke Studies誌またはPolitical Studies誌)に研究論文を投稿し、受理されることが主要な目標である。あわせて国内学会でも可能なかぎり研究論文または報告を発表する。
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Research Products
(7 results)