2019 Fiscal Year Research-status Report
Dilemma between finance and diplomacy in the United Kingdom in the former half of the nineteenth century
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18K12716
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
板倉 孝信 新潟大学, 経営戦略本部, 特任助教 (10755771)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イギリス / 西洋史 / 政治史 / 財政史 / 財政軍事国家 / 財政硬直化 / パクスブリタニカ / ウィーン体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀前半の英国が債務不履行を回避しつつ、国際的優位を維持するため、財政政策と外交政策のジレンマに、どのように向き合っていたのかを追跡したものである。2019年度には、前年度に積み残した1820年代に関する研究を完了させると共に、当該年度に予定されていた1830年代に関する研究に着手した。前年度に英国図書館(British Library)と英国立公文書館(National Archives)、早稲田大学図書館などで収集した資料を利用し、日本政治学会で研究報告を実施した。また2019年度中には採録決定まで到らなかったが、この報告時に研究論文を執筆しており、現在加筆・修正を進めている。 研究代表者は、オルソープ(Viscount Althorp)・ライス(Thomas Spring Rice)・ベアリング(Francis Baring)などの財相経験者や、パーマストン(3rd Viscount Palmerston)・ウェリントン(1st Duke of Wellington)などの外相経験者の書簡・手記に加え、財務省や外務省の文書・覚書を丹念に読み込み、前述した財政=外交ジレンマの実態に迫った。特に1830年代の英国が、前半期に減税・経費削減が絶頂を迎えたものの、後半期にその反動から増税・経費膨張に転じたために、財政=外交ジレンマが最も顕在化した時期であったと確認した。 また本研究と密接に関連する内容で、18世紀末から19世紀初の対仏戦争期における英国戦時財政とそれに対する納税者の反応を研究した単著が、2019年度に出版された。この著書の第3部では、本課題に含まれる所得税廃止論争(1816年)に関する詳細な分析を実施しているため、研究業績の一つとして紹介しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行によって、2020年3月に開催予定であった西洋史関連の研究会が中止となったため、研究報告の機会が2回から1回に減少した。この際の報告内容については、2020年度に入ってから着手した研究内容を追加し、学会・研究会の開催が可能になり次第、改めて研究報告を実施する予定である。また2019年度中に執筆した2本の研究論文は、いずれも査読時に大幅な加筆・修正を要求されたため、年度内に採録を決定させる段階まで到達できなかった。これらの研究論文についても、上記の研究報告と同様に、2020年度に入って進展した研究内容を加筆した上で、可能な限り早期に査読付雑誌に投稿したいと考えている。 その一方で、科研費採択以前から継続してきた博士論文に関する研究で、本研究課題にも直結する内容を含む研究については、当初の予定通り単著として出版することができた。この著書出版に際しては、日本証券奨学財団から研究出版助成金を受給することができたため、財政・金融学界からも一定の評価を得られたと言える。以上の理由から、2019年度までの研究進捗状況を総合的に評価すると、報告・論文などの観点から「やや遅れている」と自己評価できる。新型コロナウイルス感染症による影響もまだ残っているが、2020年度は本研究課題の最終年度に該当するため、研究計画を完遂することができるよう、より一層の努力を払っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗状況でも示したように、2020年度は前年度に積み残した研究報告を実施すると共に、それに関する研究論文を加筆・修正することを最優先課題とする。2019年度に実施予定であった1830年度に関する研究内容をより精緻化することで、2020年度に実施する1840年代に関する研究遂行に弾みを付けたい。新型コロナウイルス感染症が終息に向かえば、2020年度の秋・冬期にロンドンで不足資料の追加収集をしたいと考えているが、現状から判断すると困難である可能性が高い。その際には、日本国内や英国在住の英国史研究者に依頼し、手元にある関連資料の複写や画像を一時拝借することで、急場をしのぐことも検討している。しかし極めて必要性が高い資料が入手困難となった場合や、想定していた研究計画が十分に遂行できなかった場合には、最後の手段として研究期間の延長申請も視野に入れている。ただし現時点では、当初の研究計画を完遂できる可能性もまだ残されているので、感染症の流行状況を見極めながら、年度末まで最善を尽くしていきたい。
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Causes of Carryover |
2018年8月にロンドンで資料収集を実施した際に、40万円分の前倒し支払請求を行ったため、2019年度には当初から約7万円の繰越金が存在していた。さらに2020年2~3月に予定していた2件の研究出張が、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったため、旅費が支出できずに約22万円の繰越金が発生した。新型コロナウイルス感染症が終息し次第、再び英国で資料収集を実施する計画を立てているため、2019年度の繰越金はその旅費に充当する予定である。万一、必要不可欠な資料の入手困難などにより、2020年度に研究計画が完遂できなかった場合には、研究期間の延長が必要となるため、繰越金はその延長期間分に充当する。
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Research Products
(3 results)