2021 Fiscal Year Research-status Report
Dilemma between finance and diplomacy in the United Kingdom in the former half of the nineteenth century
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18K12716
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
板倉 孝信 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (10755771)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イギリス / 西洋史 / 政治史 / 財政史 / 財政軍事国家 / 財政硬直化 / パクスブリタニカ / ウィーン体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀前半の英国が債務不履行を回避しつつ、国際的優位を維持するために、財政政策と外交政策のジレンマにどのように向き合っていたかを追跡したものである。第4年度に当たる2021年度には、ロンドンの英国図書館(British Library)と英国立公文書館(National Archives)において、2018年度に実施した史料調査では手が回らなかった史料の追加調査を実施する予定であった。 しかし新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大によって、夏・冬期休暇中に予定していたイギリスでの現地調査を断念せざるを得なくなったため、研究の進捗状況に遅延が発生した。詳細は「現在までの進捗状況」で改めて説明するが、当初計画していた2021年度までの研究完了は困難な状況となったため、年度末に補助事業期間再延長申請を提出した。これが受理されたことを受けて、2022年度までの研究完了を目標とする。 また2020年度に予定していた学会・研究会は、概ね2021年度中に実現できたものの、学術雑誌の査読・発行過程に遅延が残っており、研究成果の発表はやや遅れ気味の状態にある。2021年度にはオンライン方式による学会・研究会が本格的に再開され、単著に関する書評会や1830・40年代の財政=外交ジレンマに関する研究報告は無事に完了した。しかし当初予定していた論文の雑誌掲載は、2022年度に延期となった。 2021年度は、1830・40年代における財政=外交ジレンマについての研究を進めたが、外交政策に関する手持ちの史料に大きな不足があったため、財政政策に関する側面のみ分析を進めた。既に国内研究者から不足史料の一部を入手できたが、今後は海外研究者や英国立公文書館に複写物の国際輸送を依頼する予定である。このように可能な限り最大限の工夫を通じて、2022年度末までに成果発表を行い、研究完了を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」でも説明したように、2021年度末の時点において、本研究課題は計画より「やや遅れている」と自己評価できる。新型コロナウイルス感染症の流行により、計画していた英国での史料調査が困難となった上、論文公表の機会も2022年度に延期されたことが主な要因である。さらに2021年度には、所属機関の変更に伴って研究室移転や新規業務が発生しただけでなく、講義・演習、入試・高大連携業務、研究会・プロジェクト運営業務などのハイブリッド化を迫られ、それらの準備作業に忙殺されることとなった。 このような事情によって、年度全体にわたって十分な研究時間を確保することが困難となり、当該年度の研究進捗はやや悪化することとなった。当初計画では第4年度の2021年度が最終年度であったが、上記の進捗状況を考慮した上で年度末に補助事業期間再延長申請を提出し、第5年度の2022年度に研究完了を目指すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」でも説明したように、1840年代の外交政策に関する不足史料の存在が、本研究における最大のボトルネックとなっているため、当該史料の入手を可能な限り進めることが、目下の最優先課題となる。また、2020年度に予定されていた単著書評会や研究会発表は2021年度に概ね実現できたため、2022年度は現在投稿中の1830・40年代における財政=外交ジレンマの論文査読手続に専念できる見込である。 ただし1840年代に関する研究成果については、史料入手の状況が芳しくない場合、2022年度にひとまず暫定的な内容のみ発表し、補助事業期間終了後の2023年度に改めて最終的な内容を発表することとする。また2022年度は現所属機関の任用2年目に当たり、1年目の2021年度よりは授業・校務負担が増大する予定であるため、年度末までに本研究計画を完遂できるよう、従来以上に日程管理を厳格に実施していきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、夏・冬期に予定していたイギリスでの史料調査を断念したため、また学会・研究会が中止・延期あるいはオンラインで実施されたため、例年は最大であった旅費が1万円未満に留まった点に帰せられる。さらに前年度からの科研費繰越金が63万円以上もあった上に、着任初年度ということもあって現所属機関から多額の学内研究費が支給されたため、それで物品費の大半をカバーできた点も指摘できる。2022年度にも新たに個人・部局配分の学内研究費が支給されるが、引き続き現所属機関での研究環境の整備や、海外からの複写物の取り寄せにも多額の費用が必要となるため、科研費の残額はそれらに充当する予定である。
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