2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12721
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川名 晋史 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (10611072)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 米軍基地 / 日米関係 / 同盟 / 安全保障 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度、本研究は戦略上は不要とされながら基地が存置され、かつその後、高い持続性を有するようになったケースとして、前年度に続き、沖縄(海兵隊基地)の調査を行うとともに、新たに北海道(千歳基地)の調査に取り組んだ。
この2つのケースが、本研究がいうところの経路依存が作動したケースとして位置づけられるかどうか検討を行いそれが概ね確認されたため、論文としてまとめた。前者のケースについては、論文「基地政策における時間」『時政学への挑戦』(ミネルヴァ書房、近刊予定)としてまとめた。後者のケースについては、関係する研究者とのあいだで意見交換を行うとともに現地調査を行った。両ケースにおいて基地が高い持続性を獲得した理由を説明するうえで、従来支配的だった戦略や予算制約といった要因(あるいはそれにもとづいた仮説群)は有効性をもたない。それらの要因の効果を制御する「基地政治における時間」のメカニズムの解明が進められている。この領域における従来の理論的関心は基地の形成過程にではなく現に存在する基地の効果を説明することにあった。その意味で、本研究の成果は基地の発展の方向性に影響を与える歴史の局面に立ち入り、そこに作用する時間の諸相を明らかにしているところに新規性がある。
基地は周囲の政治環境に左右されながら時間の経過とともに自己強化する。当初は明確な目標をもたず、またごく小さな基地として誕生したとしても、一定の条件下では時間の経過とともに成長し、他の基地との相互作用を繰り返しながら,環境に適した機能を備えていく。この過程において「環境としての時間」は、基地の発展の方向性に関する原因と結果の双方を構成するのである
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに一次資料調査を終えている。また、理論の適用に関しても研究会等をつうじて関連する研究者と意見交換を行うことができた。2019年度はそれらの成果を論文や書籍にまとめる作業に従事した。成果は2020年度に公表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は本研究の成果を公開しする予定である。研究会等で得た批判、コメントを本研究にフィードバックし、完成年度に向けて研究を推進することになる。
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Causes of Carryover |
2019年度は本研究の一部成果をまとめた図書の執筆を優先させたことから、海外出張等の旅費が抑制されたことが大きい。また、報告予定だった国際学会(ISA)がコロナ禍により中止になったこともその一因である。2020年度は、米国にて資料調査を行う予定であり、また国内でも福岡と北海道、そして沖縄を中心に実地調査を行うことになる。次年度使用額はその費用に充てることにしたい。
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Research Products
(3 results)