2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the Continuation Mechanism of Overseas Military Bases - Path Dependence Analysis
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18K12721
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川名 晋史 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (10611072)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 米軍基地 / 沖縄 / 経路依存 / 安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる2022年度は、本研究の取りまとめとして、単著『基地はなぜ沖縄でなければいけないのか』(筑摩書房、2022)を刊行した。同書では、沖縄における米軍基地集中の歴史的経緯とメカニズムを経路依存の観点から分析した。また研究のアウトリーチ活動(メディア取材、市民講座等)を実施した。 研究期間全体をつうじて、本研究課題に関する単著2冊、共著3冊、論文3本を発表した。そこから明らかになったことは次のものである。戦後の沖縄における基地の集中は、沖縄でなければ生じなかったとはいえない。戦後の在日米軍基地の配置は、その地理的条件や脅威などの外部環境によってのみ形成されてきたわけではない。国内で生じた米兵による犯罪や事故などの社会的・政治的摂動が基地の再編を促し、そのたびに、外部環境との相互作用をつうじた調整がなされていた。とりわけ、1960年代後半の基地再編とそれに付随した生じた沖縄への基地の集中には、地理に紐付けられた戦略的要因よりも、本土の反基地運動や目前に迫る安保自動延長問題や沖縄の施政権返還問題等々の政治的要因が強い影響を与えていた。タイミングの妙もあった。たとえば、もし佐世保へのエンプラ入港(68年1月)や九州大学への戦闘機墜落事故(68年6月)が沖縄の施政権返還(72年5月)よりも時期的に後に生じていたとすれば、そのときすでに基地の「収容場所」としての米軍統治下の「沖縄」はなく、仮に沖縄への移転を考える者がいたとしても、それを実現するための「政治価格」は跳ね上がっていた。歴史的事象のタイミングやその順列によっては、今日とはまったく異なるかたちで基地が配置されていた可能性があったと推論されるのである。
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Research Products
(4 results)