2018 Fiscal Year Research-status Report
Reinvigorating Liberal Internationalism-Legacy of Woodrow Wilson Revisited
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18K12725
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
三牧 聖子 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (60579019)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際連盟 / 国際秩序 / リベラリズム / アメリカ外交 / 平和思想 / 平和運動 / 国際規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
単著『ウッドロー・ウィルソン』(仮題:筑摩書房から刊行予定)の執筆を進めている。その際、実像からかけ離れた「ウィルソン主義」を批判し、その脱神話化へと向かっている近年のウィルソン研究の動向を踏まえ、国際連盟の創設への貢献など、ウィルソンの国際的な輝かしいレガシーのみならず、人種差別的な思想や政策、大戦中の市民的自由の抑圧など、国内的な負のレガシーにも目を配る、重層的な叙述となるよう心がけている。また、学者としても政治家としても多岐にわたって活躍したウィルソンの研究は、伝記的研究、政治史、外交史、国際関係論、政治学、行政学、政治思想など様々な領域で進められてきた。しかしこれらの研究は相互に交渉を欠いたまま行われ、各々の分野で 対極的なウィルソン評価が生みだされ、統合されないまま並立しているのが現状である。単著では、この現状を打破するために、他分野、特に政治思想史の分野の成果を取り込みながら、ウィルソンの政治観・世界観の内在的な理解を進め、各分野で分裂してきたウィルソン像の統合的な理解を目指す。 また、ウィルソンをとりまいた時代状況、思想状況の探求も進めている。ウィルソンの批判者としては、その平和構想を「ユートピアニズム」と批判した「現実主義者」や、連盟を通じた国際的関与に反対した「孤立主義者」がこれまでの研究における考察の中心となってきたが、ウィルソンと同時代に女性平和運動やセツルメント運動で中心的な役割を担ったジェーン・アダムズ(Jane Addams)のように、ウィルソンよりもさらにラディカルな平和や正義を追求したがゆえに、ウィルソンを批判した左派知識人・社会運動家の分析を進め、ウィルソンの政治思想・平和思想の歴史的な意義をより明らかにしたいと考えている。この研究成果の一部は米国Carnegie CouncilのWebページに掲載済だが、今後雑誌投稿論文へとまとめていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は4月に、Carnegie Council for Ethics in International Affairs website にポッドキャストThe Living Legacy of WWI: Jane Addams & Her Cosmopolitan Ethicsを発表した。ウィルソンが基本的に国家を主要なユニットとする国際平和を追求したのに対し、アダムズは移民というトランスナショナルな存在にインスパイアされた、コスモポリタンな平和思想を発展させた。その平和思想は、シカゴのハルハウスにおける移民たちとの交流の実践に端を発する「下からの」平和思想であったともいえる。アダムズの平和思想は、ウィルソンの平和思想の限界を考える上で非常に重要な視座となりうる。11月には、カーネギーカウンシルにおいて、上記ポッドキャストを発展させた内容の招待講演を行った。今後、この内容を学術論文へとまとめていきたいと考えている。 また、5月24・27日に、東京大学・早稲田大学で開催される”Intellectual History and International Relations: Japan and Anglo-America in the Early Twentieth Century“と題した公開ワークショップで報告を行い、日本知識人が、ウィルソン外交および「ウィルソン主義」にいかに対応したかという観点から、ウィルソンの国際的なレガシーを探求する。この報告も、最終的に英文図書へとまとめていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、単著の執筆を進める。それと並行して、猪口孝教授が代表者としてとりまとめている「ウィルソニアン・モーメント」に関する企画に、「ウィルソン主義」のオルタナティブの国際主義として評価できる大戦間期共和党政権の外交、特にその国際法重視の外交についての論稿をまとめ、寄稿する予定である。このような共同作業を通じ、ウィルソンその人のみならず、彼をとりまいた時代、ウィルソンとは異なる外交や平和思想の可能性についての考察を深めることで、単著も、伝記的な内容にとどまらず、今日への示唆に富んだものにしていきたいと考えている。 昨年は、研究の一時成果の報告のための渡米が多くなってしまい、資料収集に十分な時間をとることができなかった。本年度はArthur S. Link編ウィルソン文書など刊行資料の充実ゆえに、十分に活用されてこなかった議会図書館やウィルソン図書館所蔵の一次資料の調査を行いたい。また、ウィルソンをアメリカの思想家としてではなく、アングロ・アメリカの思想家として捉えるために、同時代の英国知識人の平和思想や秩序構想についても考察を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
単著執筆の計画上、海外調査を翌年以降に変更せざるを得なかったため。
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[Book] 東京大学出版会2019
Author(s)
柳原正治編著、三牧聖子著
Total Pages
524
Publisher
世界万国の平和を期してー安達峰一郎著作選
ISBN
978-4-13-036270-2
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