2018 Fiscal Year Research-status Report
ナイル川の水資源の配分の交渉プロセスの解明:中東政治変動との関連に着目して
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18K12727
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
Mohamed Abdin 学習院大学, 法学部, 特別客員教授 (40748761)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際河川 / ナイル川 / 食糧安全保障 / 湾岸諸国 / ルネサンスダム |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には、以下の研究活動を実施した。 1.ナイル川の水資源をめぐる流域諸国間における配分について、国際関係の観点から研究するにあたり、現在流域諸国の間で争点となっているエチオピアでのルネサンスダム建設によって予想される水量の変化が水環境学の観点からどのように考えられているかについて、多くの専門書を読んだうえ、専門家への聞き取りを実施した。とりわけ三ヵ国(エジプト、エチオピア、スーダン)の技術的見解がどれほど政治に利用されたか、あるいは技術的意見がどのような政治的意図によってなされたかについて、様々なメディア媒体で確認し、その分析に着手している。 2. 2019年3月から4月にかけて、スーダンで実施した現地調査においては、灌漑、外交、農業専門家およびジャーナリストへの聞き取り調査を通して、ナイルの水レジームにおけるスーダン政府の立場についての意見をうかがうことができた。同時期においては、スーダンの民衆蜂起の影響によって、インタビューの対象者全員に会うことができず、次回の調査に持ち越すことにした。 3.現地調査中に多くの専門家と良好な関係を築き、エチオピアやエジプトなどの専門家を紹介していただくことができた。さらに、今後スーダン国内で実施される関連のワークショップの資料を共有していただけることになった。言うまでもなく、本研究を円滑に実施するのに専門家や研究者とのネットワークの強化が重要な課題であると思う。 4.今後の計画に関して、研究計画案の時点では無かった重要な政治変動の一連の出来事を同テーマと関連付ける必要があるので、特にバシール政権崩壊におけるサウジ、UAEの関与と両国のナイル川水資源への関心とを結び付けた視点を新たに加えたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては、文献研究に加え、1回の現地調査を実施した。計画通りに、スーダンの灌漑、外交、農業専門家に加え、多くのジャーナリストへのインタビューを実施した。2018年末から2019年4月まで続いたスーダンでの民衆蜂起は予測外の事態であったため、調査時のインタビュー関係者との調整をある程度難しくした。特に、ジャーナリストや現役の外交官へのインタビューがもっとも調整を要するものであった。 1年目の研究の成果としては、2019年1月に京都大学でナイル川の水資源の配分に関する講演会を実施した。本研究会には60名を超す出席者が集い、出席者からヒントになる質問やコメントを多数いただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度では以下の研究活動を実施する予定である。 現地調査:前年度に引き続き、現地調査を実施して、より多くの関係者とインタビューを重ねていく。渡航先はスーダンとエチオピアである。 国際学会での発表:現地調査および2次資料から得られたデータに基づき、国際学会での発表を計画している。現時点では、米国南部政治学会での発表を検討している。 国内の学術雑誌に論文投稿:日本人読者に研究成果を発表する機会として、日本語による論文を執筆投稿する。 国際学術雑誌の論文投稿の準備:1年目及び2年目の調査・研究を踏まえた内容の論文を投稿する準備を進める。
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Causes of Carryover |
初年度に実施した調査の時期と英文原稿の校正作業が初年度支出の締め切りを過ぎてしまい次年度に繰り越されたからである。
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Research Products
(1 results)