2019 Fiscal Year Research-status Report
ナイル川の水資源の配分の交渉プロセスの解明:中東政治変動との関連に着目して
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18K12727
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
Mohamed Abdin 学習院大学, 法学部, 特別客員教授 (40748761)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際河川 / ナイル川 / 食糧安全保障 / 湾岸諸国 / ルネサンスダム |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の報告書にも記載したように、ナイル川の水資源をめぐる流域諸国間の対立が、スーダン国内の情勢に大きなインパクトを残したと考えられる。2019年4月のバシール政権崩壊に際して、そのような対立構造がどれほど影響したか、その関連性の解明を試みた。 その研究成果を、一般財団法人日本エネルギー研究所中東研究センター発行の『中東動向分析』5月号にレポートした。 さらに、2019年4月11日のバシール政権崩壊から8月17日の暫定政権発足までの間の4か月中における湾岸諸国、エジプト、エチオピアのスーダンへの国内政治への介入を分析した論考をアジア経済研究所発行の『アフリカレポート』に投稿し、2020年5月に掲載された。本稿では、ナイル川の水資源の配分をめぐる対立が、外部主体の介入の重要な動機であることを解明した。執筆にあたり、電話による専門家へのインタビューやメディア報道を主たるソースとして分析を行った。それは、同時期に、スーダンへの渡航が困難となっていたからである。 12月にタイのマヒドン大学で開催された国際会議で、バシール政権の外交におけるナイル川問題の利用を分析した発表を行い、2020年5月の日本アフリカ学会において、ナイル川地域の安全保障環境の変化をスーダンの立場から分析した口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究で予定している現地調査はスーダン、エジプト、エチオピアである。 しかし、スーダンは2018年後半からの民衆蜂起に始まり、バシール体制崩壊、及び、民主勢力と軍部との軋轢に起因する治安の悪化が続いたため、現地調査が困難であった。 さらに、バシール体制下でナイル川の水資源の配分をめぐる交渉プロセスに携わってきた専門家や外交官の一部が、体制変化以後の不透明な政治状況を受けて、研究者のインタビューやマスコミ関係者の取材依頼にたいして慎重になっている。 加えて、同時期に、3か国(エジプト、スーダン、エチオピア)間の関係が悪化し、ナイル川問題に関する情報発信に対する政府当局の監視が厳しくなり、現地調査を断念せざるを得ない状況が続いた。 2019年度の前半(4月から9月まで)のスーダンへの渡航制限に加え、2020年1月からのCOVID-19の感染拡大によって、2019年度中の現地調査が困難となった。代わって、電話やemailによるインタビューやメディア報道の分析を中心に研究活動を推進してきた。 2019年度中に予定していた研究成果を概ね研究計画どおりに達成できた。しかし、現地調査を中心とした研究活動ができなかったため、次年度の研究計画を大幅に変更する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Covid-19感染拡大対策 2019年度中の現地調査が困難であった。今後COVID-19感染拡大状況によって、1年間ほど現地調査の実施が難しくなる可能性がある。この事態にたいして、以下のように対処したい。①Emailや電話によるインタビューを中心に専門家、ジャーナリスト、外交官などへの聞き取りを継続。②スーダン、エジプトなどに、研究協力者を見つけ、インターネットで手に入らない資料の提供をお願いする。③現在の研究期間を3年間から4年間に延長する可能性を探り、滞ってきた現地調査活動を実施できるようにする。 2.米国の関与分析の重要性 これまでに東ナイル(エジプト、スーダン、エチオピア)に加え、湾岸諸国を中心とする流域外諸国の関与が、今後の水資源の配分をめぐる対立をどう左右するかについて研究調査を実施してきたが、2019年後半から、米政府が同問題に対する関心を強め始め、米主導の仲介プロセスが開始した。本研究のスコープになかったものの、軽視のできない重要なアクターとして、今後、米国の役割の分析を試みる方向で、研究計画の軽微な変更を行いたい。 3.成果発表方法 成果発表の場の「国際会議」の在り方は今後大幅に変わっていくことを鑑みて、オンライン開催を含めて、発表者としても、参加者としても、オンラインで開催される多くの関連学会に参加し、知見を広げたい。さらに、従来の計画では、最終年度となっていた2020年度の研究終了時に先立ち、ナイル川以外の国際河川の水資源の配分をめぐる問題を取り上げて、共同研究を計画する予定であったが、予定の遅れ状況に伴い、計画を来年度に延期することにする。
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Causes of Carryover |
該当年度(2018年度)末に実施した現地調査が2019年4月3日に終了した。 購入著書リストの日本語タイトル作成及び領収書の和訳作成などの準備で、関連する費用の請求が次年度(2019年度)にスライドし、形式的に、次年度の使用額として、本調査関連の費用を請求することになった。
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Research Products
(6 results)