2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the mechanism and dynamics of separatist conflicts in Eurasia
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18K12729
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
富樫 耕介 東海大学, 教養学部, 講師 (80803444)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ユーラシア / 分離主義 / 民族紛争 / コーカサス / チェチェン / イングーシ / 紛争研究 / ダイナミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は当初、紛争理論の文献調査と分析枠組みの構築に取り組む予定であったが、比較的早期にチェチェン共和国への渡航準備(現地での研究協力者が見つかり調整)が整ったため、当初の予定を変更し、チェチェン共和国におけるフィールド調査を中心として取り組んだ。日本を含めた西側の研究者が現地調査を行い、それを内外に公開することは、学術的・政治的制約があったが、チェチェン科学アカデミーや国立図書館関係者、また英国在住のチェチェン人研究者等の協力を得て、調査を実現できたことを非常に大きい。これら調査で得られた知見を既存の先行研究の中で位置付け発表することにも取り組み、その成果は学会発表・学会誌に投稿した。 同時に、チェチェン以外のコーカサスの紛争に関しても文献調査を進め、情報更新に努めた。特にここ数年の間に変化したナゴルノ・カラバフ情勢、あるいは新たに境界変更が加えられたイングーシに関する調査があげられる。旧ソ連・ユーラシア地域の紛争の中でもコーカサスの紛争は、その数及び規模でも中心を占めるが、これらの紛争を改めて文献調査の上、理論や比較に基づいて検討する作業は非常に重要である。作業を次年度中に終え、単著の出版を目指す。その上で、今まで十分にカバーできていなかったコーカサス以外の紛争事例への考察へと進む。 当初予定していた理論研究の調査と分析枠組みの構築は、上記のようにチェチェンにおける調査が実現し、そこで得られた理解の分析等に時間を要したため、本年は十分に取り組むことはできなかった。他方で、チェチェンに対して筆者が今まで用いてきた分析枠組み(「領域をめぐる対立」と「政府をめぐる対立」という「二重の対立構造」が紛争のダイナミズムに与える影響、分離主義地域と中央政府の間の「コミットメント問題」が紛争回避・不可避に与える影響)を精緻にすることには取り組め、学会発表等も行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とはやや異なるが、紛争事例の調査においてチェチェン共和国におけるフィールドワークを行うことができたことは極めて大きな成果であり、今後の研究全体に対する進捗状況にも大きなプラスになったと思われる。またコーカサス地域の紛争に関して新たに文献調査を進めることができていることも良い傾向であると思う。 しかし、当初は理論研究のサーベイと分析枠組みの構築に初年度半年間で取り組むと考えていた点からすれば、予定が変わったのは事実であり、当初の計画以上に進展しているとまでは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、事例研究と理論研究のバランスを意識して研究の推進を図っていきたい。まず前半で、コーカサスの紛争に対する追加的文献調査を終え、紛争の理論や比較に基づく考察結果を示せるようにする。その上でコーカサス以外の旧ソ連・ユーラシア地域の紛争事例(プリドニエストル、ウクライナ東部内戦)の文献調査にも進む。その際にコーカサスの紛争事例との比較を意識したい。 次に理論研究に関しては、本年十分に取り組むことができなかった文献研究と紛争の分析枠組みの構築のための作業に取り組みたい。上述のように特にチェチェンに対して筆者が用いている分析枠組みをより汎用性の高いものとする作業を継続することで、分析枠組みの構築に取り組む。 初年度の反省点として、特に個々の紛争事例の調査をすると、細かな事実確認等のミクロな作業に追われ、理論や比較という作業に中々進めなくなる恐れがあるので、その点は意識しながら、今後の研究の進展を図りたい。
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