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2019 Fiscal Year Research-status Report

Analysis of the mechanism and dynamics of separatist conflicts in Eurasia

Research Project

Project/Area Number 18K12729
Research InstitutionTokai University

Principal Investigator

富樫 耕介  東海大学, 教養学部, 講師 (80803444)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywordsユーラシア / 分離主義紛争 / 未承認国家 / 住民世論 / イスラーム過激派 / グローバル・ジハード / 旧ソ連地域 / コーカサス
Outline of Annual Research Achievements

本年は、大きく分けて三つの作業に取り組んだ。第一に、旧ソ連地域の紛争事例を理解するための分析枠組みの構築のために紛争を比較する作業に取り組んだ。これは、主にコーカサスの事例に主軸をおいたが、これまで十分にフェローできていなかった沿ドニエストルや東部ウクライナ地域(ドンパス、ルガンスク)についてもコーカサスの紛争の比較によって抽出できた着眼点や視座を用いて予備的考察を試みた。他方で、これらの紛争について収集していた論文や書籍についての本格的検討を行うまでには至らなかった。これは次年度に可能な限り取り組み、紛争の分析枠組み構築に取り組みたい。
第二に、旧ソ連地域の分離主義紛争の一つの特徴であり、紛争を長期化させ再発のリスクを生み出している「未承認国家」という状態(分離主義地域が中央政府の統制を離れ存続する状態)に対する考察を進めた。未承認国家の生成と存続は、旧ソ連地域の紛争のメカニズムやダイナミクスを考える上で重要な要素を占めている。未承認国家がいかに形成され、なぜ存続しているのか、特にこれが紛争の平和的解決にどのような課題を残しているのかを検討した。ここでも沿ドニエストルや東部ウクライナもコーカサスの事例と同じ要素に注目しつつ考察を行った。
第三に、非国家主体が分離主義紛争のダイナミクスにいかなる影響を与えるのかについて検討を行った。ここでは、紛争地の住民とイスラーム過激派組織という二つのアクターに注目し、彼らの動向や認識・行動と紛争地の安定化・不安定化の間にいかなる関係性があるのかについて考察を行った。このうち北コーカサス地域では現地調査を行い、チェチェンではインタビューも実施した。それ以外の地域の住民世論については既存の世論調査を用いた検討を行った。イスラーム過激派については、ISなどグローバル・ジハード運動との関係性が旧ソ連地域の紛争のダイナミクスに及ぼす影響を考察した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究構想時は、紛争の理論的分析枠組みを構築した後に紛争事例への考察へ進もうと考えていたが、チェチェン共和国でのフィールドワーク調査が初年度に実現し、その調査を踏まえた研究成果の見込みが高まり、研究計画を修正した。すなわち個々の紛争事例に対する考察とそれを踏まえた比較研究に取り組むことで、ユーラシア地域の分離主義紛争の特徴を抽出し、これらの紛争のメカニズムとダイナミクスを考察するという方法に改めた。そのような修正を反映した上で、本年の研究を見れば、順調に取り組むことができているのではないかと考えられる。
なお本年には、昨年に引き続き北コーカサス地域(イングーシ、ダゲスタン、チェチェン)での現地調査を行い、チェチェンでは紛争後の安定とそれに対する住民の認識を問う質的インタビュー調査を行うことができた。またこれらについて学会発表を行なっており、研究成果を論文として刊行することに取り組む予定である。旧ソ連地域の紛争のメカニズムとダイナミクスを考察する書籍も脱稿しており、次年度中に刊行予定である。これは既述のように主にコーカサス地域の紛争に焦点を当てているが、同地域の枠に留まらない越境する非国家主体と紛争の関係や、分離主義地域と国際社会の関係などユーラシア地域の他の分離主義紛争を理解する上でも役立つものになると考える。以上のように一定の研究成果が刊行できる見込みが立ってることもあり、研究はある程度順調に進んでいると思われる。

Strategy for Future Research Activity

次年度は最終年度であり、これまでの研究をまとめ、本研究が提起していた問いに対して一定の回答を得る必要性がある。本年得られた研究成果を基盤としつつ、旧ソ連地域の分離主義紛争の分析視角を構築する作業に取り組みたい。
第一に、コーカサスの紛争事例を通して得られた分離主義紛争に対する分析視角を用いて沿ドニエストルや東部ウクライナについても比較の観点からの考察を進める。両地域に対する研究蓄積は手厚く、これらを最初から後追いすることは現実的ではないため、あくまでもコーカサスの紛争事例との比較を意識して、これらの紛争の分析を行う。ここで得られた知見を用いて旧ソ連地域の分離主義紛争を理解するための枠組みや視座を提示したい。
第二に、その際に活用する理論的ツールについて、分離主義紛争のメカニズムとダイナミクスを理解するための理論的ツールについては、特に武力紛争の激化や鎮静化に対して外部関与が果たす役割に限定して考察する。武力紛争そのものは、各地域それぞれ異なった背景や文脈で生じており、これらを包括して理解するための知見を理論から得ることは困難である。そこで、紛争の激化や鎮静化のフェーズのみに焦点を絞り、また紛争当事者以外の外部アクターの役割に注目することで、理論的知見を得ようと試みる。これを旧ソ連地域の紛争事例に当てはめて考察を試みる。
第三に、非国家主体と紛争のダイナミクスの関係に関する考察を進めることである。本研究は実質的に旧ソ連地域の紛争を考察対象としながらも、ユーラシア地域の分離主義紛争という研究タイトルとしたのは、国境を越える非国家主体と紛争のダイナミクスの関係を意図し、非国家主体が旧ソ連地域に留まらず、それ以外の地域にも出ていき、あるいはそれらの地域から流入してくると想定してのことであった。これはイスラーム過激派等の武装勢力の動向の考察を通して今後も考察を進めたい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2019

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 紛争後のチェチェンにおける権威主義体制下の「平和」: 「平和」をめぐる現地住民の言説の比較・検討2019

    • Author(s)
      富樫耕介
    • Organizer
      日本平和学会

URL: 

Published: 2021-01-27  

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