2021 Fiscal Year Annual Research Report
An Empirical Study on How China's Domestic Politics Influence its Policy Decisions toward Japan
Project/Area Number |
18K12731
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
兪 敏浩 名古屋商科大学, 国際学部, 准教授 (80530245)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 政治安全保障 / 経済安全保障 / 貿易不均衡 / 歴史教育 / 胡耀邦 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には1980年代における中国の内政が対日政策決定に影響を及ぼすメカニズムについて研究を行った。1980年代の中国は改革開放政策をめぐって改革派と保守派に分裂しており、この対立が対日政策決定に影響を及ぼしたという見方がこれまで一般的であった。胡耀邦に代表されるように改革派でありながら親日派であった人物もいたが、しかし改革派が対日政策に積極的であり、保守派が消極的であったという二分論は成立しない。ではどのようなメカニズムで中国の内政は対日政策決定に影響を及ぼしたのか?私は「政治安全保障」と「経済安全保障」という二つの視点からこの問題に対する回答を試みた。端的に言えば、「政治安全保障」とは改革開放時代の下でも国内安定、共産党の指導体制の保持を揺るぎないものとすることを意味し、「経済安全保障」とは中国経済が外部に対して過度に依存することなく自立した発展を遂げる状態のことを指す。 1980年代の初め、中国共産党は「民主の壁」、「ポーランド危機」を総括し、「政治安全保障」を強化する必要性を意識した。愛国主義の発揚を狙いとした近代史教育に対する見直しが行われ、その中で抗日戦争中に中国が被った被害と犠牲が強調されるようになった。これがその後歴史認識をめぐって日中関係がギクシャクする背景の一つとなった。 しかし1980年代の中国の対日政策決定により直接的な影響を及ぼしたのは「経済安全保障」要因であった。1980年代の日中経済関係は拡大しつつあったが、中国は大幅な対日貿易赤字を深刻に捉えていた。また日本企業の対中投資と技術移転も期待を大きく下回っていたことから実務レベルでも日本に対して批判的な意見が高まっていたのである。 1980年代の中国の対日政策決定については、イデオロギー部門や対外貿易部門など、実務レベルでのさらなる実証分析が今後求められる。
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