2018 Fiscal Year Research-status Report
What kinds of effects does a "weak" international organization have? A case study of the United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs (OCHA)
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18K12736
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
赤星 聖 関西学院大学, 法学部, 助教 (20795380)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グローバル・ガバナンス / 国際機構 / 人道支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「弱い」国際機構が国際社会においてどのような役割を果たし、どのような影響を与えることができるのかを、国連人道問題調整事務所(OCHA)を事例として解明しようとするものである。予算規模や職員数、権限が極めて小さいOCHAは、国際社会に対して影響力を発揮することが難しいと考えられるものの、世界人道サミットなどを通して、アクター間の学習を促し、人道支援の考え方の転換を図った。このOCHAの活動の分析を通して、「弱い」国際機構が果たしうる役割・影響力に関する暫定的な仮説構築を行い、将来的な比較分析につなげていきたい。 第1年目は、(1)「弱い」国際機構の影響力に関する予備仮説の構築、(2)事例に関する文献調査を行った。なお、(3)国内での聞き取り調査は行うことができなかったものの、学内の個人研究費を用いてパプアニューギニアでの聞き取り調査を行った。この目的は、常駐調整官事務所(RCO)の役割をパイロット的に調査しようとしたものであったが、本研究が対象とするOCHAの比較対象となりうる可能性を持っており、本研究を相対化することにつながった。 (1)予備仮説の構築については、オーケストレーション論や実験主義ガバナンス、目標設定型ガバナンスなど、近年のグローバル・ガバナンス論で議論となっているガバナンス手法を中心に検討を試み、その暫定的な成果を国際学会にて報告した。理論的検討を進める中で、視野の狭さを感じたこともあり、社会学理論の検討なども順次進めている。 (2)事例に関する文献調査については、現在もなお進行中である。まだ動き出して数年ということもあり、ようやく進捗報告書などが出揃ってきたという段階であり、引き続き体系的な調査を行っていきたい。こちらの暫定的な結果も上述のように国際学会にて一部報告を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも述べたように、第1年目は、(1)予備仮説の構築、(2)事例に関する文献調査、(3)国内での聞き取り調査を予定していた。(1)(2)はおおむね順調に進んでいると思われ、仮説の精緻化と事例分析の結果を適宜往復しながら、さらに質の高い研究成果になるように準備をしている。そのうちの1つはすでに英文校正結果が返ってきているため、それを修正中である。(3)については、事例に関する文献調査が進捗中であること、また聞き取り対象者が他国事務所に赴任するなどの結果として実施することができなかった。こちらは早急に実施できるように準備を進めたい。他方で、本研究とは直接には関係がないものの、パプアニューギニアでの聞き取り調査の結果として、OCHAを相対化して見ることができるようになった。本研究の発展可能性が見えたことからも非常に有意義であったといえる。 すなわち、(3)は実施できなかったものの、他研究との相乗効果で、本研究の理論的発展に関する可能性が見えてきた。なお、研究成果の公表については、本研究の暫定的な成果について国際学会で3度発表を行い、また英文査読誌に投稿するためのドラフトを2つ準備できた。これらのことから、研究進捗全体としては「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年目は、上記(2)(3)を進めると同時に、(4)ニューヨークおよびジュネーブでの聞き取り調査を予定している。ジュネーブには、人道支援関連の国連機関、NGO、シンクタンクが集まっているため、体系的かつ効率的に聞き取り調査を行うことができる。ニューヨークには、世界人道サミットを主導したOCHAの部署があり、国連事務局や各国国連大使への聞き取り調査が可能である。現在質問リストを作成中であり、夏季休暇あるいは春期休暇中に実施する予定である。それらを踏まえて、2019年度中に事例研究に一定の目途をつけたい。 また、最終年度に向けて、研究成果の公表も積極的に行っていきたい。すでに準備している英文査読誌のドラフトのうち、1つはすでに英文校正結果が返ってきており、その修正と更なるブラッシュアップを行ったうえで、国際査読誌に投稿できるよう準備を進めている。また、現在もう1つドラフトを準備中であり、こちらについては2019年度末に開催されるInternational Studies Association(ISA)研究大会などに応募予定である。
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Causes of Carryover |
(1)資料収集・聞き取り調査保存のためのパソコン購入のタイミングを逃したことと、(2)第1年目に予定していた国内での聞き取り調査ができなかったことが主な要因である。この2点については、(1)2018年度はこれまで使用してきたパソコンを利用していたが、研究遂行上で必要な性能のパソコンの購入費用に充てる。また、(2)国内での聞き取り調査も春学期中に実施予定である。これで次年度使用額(昨年度未使用額)はすべて執行される予定である。なお、パソコン購入というインフラを整え、また国内での聞き取り調査を踏まえて、2019年度は夏または春にジュネーブおよびニューヨークでの聞き取り調査、また海外での学会報告を予定している。
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