2019 Fiscal Year Research-status Report
What kinds of effects does a "weak" international organization have? A case study of the United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs (OCHA)
Project/Area Number |
18K12736
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
赤星 聖 関西学院大学, 法学部, 准教授 (20795380)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グローバル・ガバナンス / 国際機構 / 人道支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「弱い」国際機構が国際社会においてどのような役割を果たし、どのような影響を与えることができるのかを、国連人道問題調整事務所(OCHA)を事例として解明しようとするものである。予算規模や職員数、権限が極めて小さいOCHAは、国際社会に対して影響力を発揮することが難しいと考えられるものの、世界人道サミットなどを通して、アクター間の学習を促し、人道支援の考え方の転換を図った。このOCHAの活動の分析を通して、「弱い」国際機構が果たしうる役割・影響力に関する暫定的な仮説構築を行い、将来的な比較分析につなげていきたい。 2019年度は、(1) 事例に関する現地調査、(2) 論文草稿の執筆を行なった。 (1) 事例に関する現地調査については、2019年9月にヨルダンにおいてプロジェクト訪問調査およびインタビュー調査を行なった。シリア難民の流入に伴う対応を迫られているヨルダンであるが、国連機関およびNGOが協力して事業を行なっていた。とりわけ、国際労働機関(ILO)でのインタビューでは、(a)「One UN」のもとで協力関係が以前よりも進展している、(b) 各機関の得意・不得意を勘案して、協働して事業を行なうか否かを決めている、などの成果が得られ、世界人道サミットにおいて諸国際機構が合意した「New Way of Working」が現地でも実施されていることが分かった。なお、2020年3月にニューヨークでの聞き取り調査を予定していたものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のためにキャンセルせざるを得なかった。 (2) 論文草稿の執筆については、3月の国際学会に向けて準備をしていたものの、こちらもCOVID-19のために中止となった。現在は、論文草稿のブラッシュアップとともに、2021年2月に単著を公刊することが決まり、その準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも述べたように、2019年度は、(1) 事例に関する現地調査、(2) 論文草稿の執筆を行なった。(1) については、3月のニューヨーク調査が中止となったため、満足のいくものとはならなかったが、ヨルダンでの調査は、New Way of Working の意図が現場に反映されていることを確認できた点で、有意義な成果を得ることができたと評価できる。また、制限があり不十分な形とはなるが、3月に予定していた調査をオンラインで実施できないか模索している。(2) については、残念ながら国際学会での報告は中止となってしまったが、(a) オンラインでの国際学会発表を6月下旬に予定していること、(b) 単著刊行の目途が立ったこと、などから十分に進展していると考えられる。 すなわち、(1)について一部不満足な点はあるものの、実施した分については有意義な成果を得られ、また研究発表についても順調に進んでいることから、研究進捗全体としては「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までは順調に研究が進んできたものの、COVID-19の世界的な蔓延という大きな不確実性が生じている。本研究は、OCHAという「弱い」国際機構がどのように国際的に影響を及ぼすことができるのかという点を解明しようとするものであり、グローバルレベルとともに、現場レベルにおいて機関間調整がどのように行われ、機関間の相乗効果を生み出そうとしているのかを観察する必要がある。3月に実施できなかった聞き取り調査を含めて、一部はオンラインでの実施を調整しているが、人道支援の現場での調査が実施できない場合には、研究計画の大幅な変更を検討しなければならない可能性が高い。現時点では、9月にウガンダでの現地調査を予定しているが、後ろ倒しにせざるを得ないかもしれない。 対応策としては、2020年度はオンラインでの聞き取り調査と文献調査、論文および単著の執筆にまずは専念することになろう。しかし、現地調査ができないことは、本研究の当初目的に照らし合わせると不満足な結果となってしまいかねない。2020年度のみならず、数年間の見通しについても慎重に検討しながら、状況の好転が大きく見込めない場合には研究期間の延長も視野に入れつつ、可能な範囲で最大限の成果を出せるように研究を遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月にニューヨークでの聞き取り調査を予定していたが、COVID-19の蔓延に伴い、ドナルド・トランプ米大統領が日本に対して入国制限を検討しているという報道を得た。この場合、現地渡航をしたとしても2週間動きがとれず、結果的に聞き取り調査を行なうことができなくなる可能性が高いと考え、聞き取り調査を直前で中止した(なお、その時点では入国制限は発表されなかった)。この研究調査旅行の中止に伴い、その分の次年度使用額が生じた。 現状では、上半期においての現地調査は難しいと考える。しかしながら、現地調査は本研究において要となる部分であり、下半期での実施をまずは模索したい(ウガンダ、アメリカ・ニューヨーク、スイス・ジュネーブ)。なお前年度未使用額については、現地調査旅費、必要とされる文献購入代、2020年6月に予定している学会発表論文の英文校正、オンラインでの実施を予定している聞き取り調査の書き起こしなどに利用する予定である。
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