2018 Fiscal Year Research-status Report
沖縄への米軍基地集中に関する外交史研究-三つの局面の分析
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18K12737
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
野添 文彬 沖縄国際大学, 法学部, 准教授 (00636540)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日米関係 / 沖縄 / 沖縄米軍基地 / 沖縄返還 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の第一年目となる本年度の実績は、以下の通りである。 第一に、米国ワシントンに出張し、史料調査とインタビューを行った。史料調査としては、米国国立公文書館で1950年代の日米関係について、国務省、統合参謀本部の文書を収集・分析した。本研究の対象時期となる1950年代の日米関係において、沖縄や米軍基地がどのように扱われているのかについて調査することができた。特に、「島ぐるみ闘争」、軍用地問題の解決、沖縄分離返還構想、安保改定を日本政府、米国政府、沖縄現地の相互作用の一連の流れとして把握することができた。そして、特に米軍部の日本への警戒感からの沖縄への固執についても明らかにすることができた。インタビューとしては、沖縄返還交渉において米国政府内で重要な役割を果たしたモートン・ハルぺリン氏にインタビューを行い、米国政府内の政策決定過程を知ることができた。 第二に、いくつかの論文を発表した。特に、本研究のテーマである沖縄米軍基地の歴史について、その全体像を長谷川雄一編『現代の国際政治 第四版』の第14章「日米安保と「沖縄問題」」でまとめることができた。ここで記述したものを土台として、今後より特定の時期について詳細にかつ比較的観点から検討を進めていく。また1970年代から1990年代前半についても、「沖縄米軍基地と日米安保体制ー沖縄返還から冷戦終結まで1972~1995年」と題する論文を発表した。ここでは、本研究の重要論点である1970年代以降の歴史を考察することができた。 第三に、口頭での報告を行った。2018年度占領・戦後史研究会シンポジウム「サンフランシスコ講和の歴史像」で、コメンテーターをつとめた。サンフランシスコ講和条約締結の時期は、本研究の重要論点の一つであり、サンフランシスコ講和と沖縄の関係について、近年の研究とその課題についてまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に入る直前に、学内の事情で、急きょ、学務の役職につくことになり、当初の計画の予定が大きく変更されることになったため。学務のために、予定していた海外・国内調査もいくつか断念せざるをえなかった。役職はもう一年あるが、来年度以降は、役職にも慣れるなどして、遅れた研究を取り戻すことができると考える。また、出張が難しい場合は、研究費を使用して国内の図書や資料の複写請求などを積極的に行うことで、研究を効率的に進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の二年目となる次年度は、引き続き史料調査を進めるとともに、最終年度である三年目をひかえて、研究成果をより積極的に発表して行くことを目指す。具体的には、今後の計画については、次のように構想している。 まず、今年度重点的に研究を進めてきた1950年後半代に加えて、サンフランシスコ講和条約締結前後の1940年代後半から1950年代前半について研究を進める。そのため、米国国立公文書館への史料調査を行うとともに、国内の史料調査を実施する。米国立公文書館では、朝鮮戦争の時期の日本本土の米軍基地や沖縄の米軍基地の役割、1970年代の在日米軍基地の再編計画について検討を進める。国内の史料調査では、岩国、佐世保、横須賀といった米軍基地所在地での調査を行う。現地の図書館での史料調査や聞き取りなどを通し、これらの地域の米軍基地の歴史をまとめ、沖縄の米軍基地の歴史と比較する。2018年度は、学務で多忙であったため、国内・国外の出張が十分にできなかったので、次年度以降は、出張に加え、資料の貸し出し・複写サービスなども積極的に活用し、調査を行うことで、研究の遅れを取り戻す。 また、これまでの研究成果を学会報告や論文という形で発表する。すでに、研究会発表と学会発表の予定がそれぞれ入っており、これらを通して、これまでの調査を整理するとともに、他の研究者からのコメントを通して研究を改善させていく。また、報告をもとにしつつ、論文を執筆・発表する予定である。さらに、すでに執筆中である、沖縄の米軍基地の歴史についての単著についても執筆を進め、最終年度の出版を目指し、二年目となる2019年度中にはいったん内容をまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
前述のように、本年度開始直前、急きょ学内の事情で学務の役職につくことになり、この仕事のため、当初予定していた国外・国内の出張を断念せざるをえなかったため。学務の役職の仕事に追われ、当初の想定よりも、本研究に費やす時間や費用を大幅に削減せざるを得なかった。次年度以降は、役職の仕事への慣れや、国内図書館、あるいは学生アルバイトなどの利用により、より効率的に作業が進められると考えている。
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[Book] 現代の国際政治[第4版]2019
Author(s)
長谷川 雄一、金子 芳樹
Total Pages
376(担当章第14章「日米安保と「沖縄問題」)
Publisher
ミネルヴァ書房
ISBN
9784623085613