2021 Fiscal Year Research-status Report
新しいタイプのデータ、解析手法を活かした行動経済学の実証研究
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18K12742
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萱場 豊 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (00708612)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行動経済学 / 実験経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の末に実施したネットワークを通じた価格競争の実験結果の精緻なデータ解析を進めた。また、その結果を踏まえ、当初想定していた理論についての修正を行った。そして、その理論の修正に基づいて更なるデータ解析を進め、一定の解釈に落ち着いたため、論文にまとめて公表した。論文は学会誌に投稿し、審査の結果を待つ状況である。 本論文は、標準的な経済理論においては、ネットワークを通じて情報財を取引する場合、複製を通じた競争が発生することで、取引価格が下がることが指摘されているが、それを実験で検証した。本プロジェクトで得た実験結果では、情報財が実際に複製された後の競争では確かに価格が下がったが、これは理論が想定したよりもはるかに小さい度合いに留まった。また、情報財のコピーが行われる前の時点である最初の取引においても、理論上は価格が下がるはずであったが、データではむしろ上がるという逆転現象が確認され、結果、理論が想定するよりもはるかに大きな収入が、情報財の初期所有者に留まることが確認された。これは、標準的な理論がそのままのかたちでは現実からかけ離れている可能性を示唆している。 現在、昨年度末から本年度にかけて行われた実験用ソフトウエアの大規模なアップデートで新たに可能になった機能に基づき、本プロジェクトをより深堀させることができる追加実験が可能になったことや、研究会等で他の研究者の指摘がその追加実験の必要性に沿ったものであったことを踏まえ、追加実験の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の下でオンラインで出来る実験を進めてきたが、現在、研究会等での指摘を踏まえて追加実験を行うことを考えている。しかし、その実験がオンラインで行うとシステムトラブルが発生しやすいことが度重なる予備動作実験で判明し、オンラインでなく実験室実験に切り替える方向で検討している。実験室実験でなら実施できる見通しは立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
新年度になり緊急事態宣言が明けており、実験室での実験が通常通りできる時期を見計らって実験を行い、論文の改定につなげる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の下で実験を行うにあたって、オンラインで行おうと予備動作テストを行ったところ、システムトラブルが頻発したため、非常事態明けでの実験室実施に切り替えた。それにより、実験の実施及びそのデータの解析を次年度に繰り越したため。
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