2023 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Study of Behavioral Economics Employing New Types of Data and Statistical Methods
Project/Area Number |
18K12742
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萱場 豊 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (00708612)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 行動経済学 / 実験経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に当該分野のトップジャーナルに投稿し、改定依頼を受けていた論文の改定作業を終え、再投稿を行った結果、無事、当該ジャーナルに受理された。本論文は、標準的な経済理論においては、ネットワークを通じて情報財を取引する場合、複製を通じた競争が発生することで、取引価格が下がることが指摘されているが、それを実験で検証した。本プロジェクトで得た実験結果では、情報財が実際に複製された後の競争では確かに価格が下がったが、これは理論が想定したよりもはるかに小さい度合いに留まった。また、情報財の複製がまだ行われる前の時点である最初の取引(第一段階の取引)においても理論上は価格が下がるはずであったが、データではむしろ上がるという逆転現象が確認された。これは、標準的な理論がそのままのかたちでは現実からかけ離れている可能性を示唆している。昨年度末に行った追加実験では、この理論からの乖離がより頑健な結果であることを確認するため、複製を通じた競争がより激しく行われることが期待される実験環境を設定した。本年度に行ったデータ解析から分かったことは、競争がより激しくなったことで、確かに複製による競争による価格は一定程度下がったが、第一段階の取引については、むしろ、買い手の間の競争の激化のせいによるover-biddingのせいか、価格がより上昇し、理論通りの結果に近づいたとは評価しがたいことが明らかになり、前回の実験結果の頑健性が確認できた。また、こうした理論の乖離に被験者の社会的効用が関係している可能性があることも示唆された。 また、別プロジェクトとして、over-biddingを防ぐオークションの設計の実験による検証にも取り組んだ。逐次的にWTPを訪ねる入力方法を導入することで、over-biddingを防ぐ効果があることを確認し、本学CARF working paperとして公開した。
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