2018 Fiscal Year Research-status Report
共有資源の配分問題におけるメカニズムデザイン:理論と実験
Project/Area Number |
18K12744
|
Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
山邑 紘史 北星学園大学, 経済学部, 講師 (00610297)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 共有資源 / 単谷型選好 / 二択メカニズム / ナッシュ遂行 / ポテンシャルゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
複数人が利用権を共有している共有地において、利用者が自由に資源を利用できるとき、資源は乱獲され枯渇していくことが「共有地の悲劇」として知られている。共有地の悲劇を防ぐべく、限りある資源を効率的かつ公平に配分するためには、利用者の属性に基づいて資源を配分する仕組み(配分メカニズム)を構築する必要がある。 本年度は、利用者の資源利用技術が規模に関して収穫逓増であるなどの理由で、利用者が配分される資源量に対して単谷型選好を有する状況における理論研究を中心に行った。先行研究を通じて、耐戦略性とパレート効率性とを要求する限り、匿名性や個人合理性などの公平性原理を充足する配分メカニズムの構築が原理的に不可能であることがわかっている。そこで、耐戦略性を諦める代わりに、ナッシュ均衡において効率的かつ公平な配分を遂行するようなメカニズムを設計することを目指した。 本年度の研究成果として、資源を「必要とする」か「必要としない」かのみを表明し、「必要とする」と表明した利用者間で資源を等分する、というシンプルな配分メカニズム(以下では「二択メカニズム」と呼称する)を考案し、その性能を分析した。その結果、①二択メカニズムのナッシュ均衡配分が弱パレート効率的であること、②二択メカニズムのナッシュ均衡配分が、匿名性・個人合理性・等分コアなど、複数の公平性の基準を充足していること、③二択メカニズムのナッシュ均衡が動学的に安定であること、が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
利用者が単谷型選好を有している状況において、先行研究において示された不可能性を踏まえた上で、代替案として単純で自然なメカニズムを構築し、その性能を調査することができた。これらの成果をディスカッションペーパーとしてまとめた。
|
Strategy for Future Research Activity |
利用者が単谷型選好を有している状況下の共有資源の配分問題において、二択メカニズムの性質を分析した理論研究について、国際ジャーナルへの公刊を目指す。 また、現実において二択メカニズムが理論予測通りに機能するかどうかを、経済実験を通じて調査したい。そのために、まずは二択メカニズムに関する経済実験の計画を策定し、可能であれば今年度中に実験を実施したい。
|
Causes of Carryover |
2019年度より所属研究機関の異動があり、3月に予定していた研究出張をキャンセルしたため。 キャンセルした研究出張を、2019年度中に実施する予定である。
|