2018 Fiscal Year Research-status Report
有限期間パテントモデルを用いた経済成長と経済変動の理論分析
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18K12750
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
都築 栄司 南山大学, 経済学部, 教授 (10714769)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | R&D / 内生的成長 / 特許 / 局所的決定性 / 微分差分方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
特許期間の有限性を考慮したR&Dに基づく内生的成長モデルの動学的安定性について分析を行った.研究の成果は,次の学術論文としてまとめられ,2019年3月に刊行されている:「特許期間の有限性の下でのマクロ動学分析」, 『経済貿易研究』第45号,神奈川大学経済貿易研究所.連続時間モデルにおいて特許期間が有限である場合,モデルを特徴づける方程式体系は微分差分方程式体系となる.この微分差分方程式体系について分析し,特許の有限性が均斉成長経路の局所的決定性に与える影響について解析的に明らかにした.Iwaisako and Futagami (2003)は,均斉成長経路上で特許政策が成長率にどのような影響を与えるかについて考察したものであるが,成長経路の安定性(決定性)には触れていない.本研究の分析の結果,特許期間が有限である場合でも,その長さに依存せず,均斉成長経路は局所的に決定であることが示された.有限の特許期間を持つR&Dに基づく内生的成長モデルに関する他の研究として,Futagami and Iwaisako (2007)は,離散時間モデルを用いて,特許期間を政策的に変更可能な状況を想定して分析を行っている.この場合,有限の特許期間を想定しても,体系が微分差分混合方程式体系として表されることはなく,高次の差分方程式体系となる.本稿の分析は,Futagami and Iwaisako (2007)による動学分析の連続時間版と位置づけることができる.なお,本研究は神奈川大学経済学部准教授の品川俊介との共同研究として遂行された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,研究の第1段階として,(a) 定常状態において外生的要因なしには持続的成長が生じない外生的成長モデルを用いて,パテントの有限性が経済の安定性に与える影響に焦点を絞って分析を行い,第2段階として,(b) 第1段階で行った研究を,内生的な要因による持続的成長を伴う成長モデルに発展させて同様の分析を行う,という手順を想定していたが,簡単なケースについては(b)の結果が先行して得られたため,そちらを先に発表する形となっている.現時点で(a)に関する研究成果もある程度は得られているため,同時に進めている状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
上記(a), (b)で構築したモデルを用いてパテント政策の効果について分析する.一般に,パテントを強化する政策(プロパテント政策)は,経済成長を促進するポジティブな効果と独占により市場に歪みをもたらすネガティブな効果を持つことが知られているが,本研究ではさらに経済の安定性や厚生に与える効果を加えて分析する.具体的には,Iwaisako and Futagami (2003)で示された社会的厚生を最大化するようなパテントの有効期間が,安定性と両立可能であるかを分析する.
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Causes of Carryover |
a. 学会や研究会への参加が諸事情によりあまりできなかったため.430千円(昨年度分+今年度分)を消化予定. b. 物品の調達と人件費・謝金も,研究の順序が前後したため,活用する機会があまりなかったが,今後必要になる.860千円(昨年度分+今年度分)を消化予定.
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Research Products
(1 results)