2020 Fiscal Year Research-status Report
J.R.コモンズ制度経済学の再評価:信用市場統治に注目して
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18K12753
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
北川 亘太 関西大学, 経済学部, 准教授 (20759922)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | J.R.コモンズ / 制度経済学 / 制度的貨幣論 / 信用貨幣 / R.G.ホートレー |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ制度学派創始者の一人J.R.コモンズは、実体経済の労使での統治を論じた労働経済学者として知られている。しかし、本研究は、彼を、主流な経済学では捉えられない信用市場の不安定性を企業の期待に注目して解き明かし、それを制度的に安定させるための民主的な統治方法を示した学者として捉え直すことを目指す。そのために、本研究は、彼が信用市場をいかに理解し、その理解を統治の提案といかに結び付けたのかを明らかにする。本研究では、収集済みの資料(新発見のコモンズの草稿等)の読解、及び、主流な経済学との比較分析という方法を通じて、コモンズの信用市場論を明確化する。今年度は、こうした「研究の目的」と「研究実施計画」に基づいて、J.R.コモンズの制度的貨幣論の形成過程を彼の1890年から1934年までの著作・草稿をつぶさに検討し、英語論文としてまとめた。その要旨は次の通りである。本論文は、「所得アプローチ」を参照してコモンズの価格変動論の形成過程を分析した。1890年代の著作に比べて、1923年の著作で大きな理論的飛躍があり、その理由の一つは彼が所得アプローチの先駆者ホートレーの著作を読んだことであった。さらに、彼は大恐慌期の価格下落を説明するなかで所得アプローチの体系的説明を完成させた。本論文では、以上の検討・整理から、コモンズの『制度経済学』を、労働経済学の古典としてだけでなく、制度的貨幣論を体系的に論じた古典として捉え直せることを示した。本論文はJournal of Economic Issuesに査読付き論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究(J.R.コモンズの制度的貨幣論の形成過程)の結果を公表する媒体として最も望ましいJournal of Economic Issuesに査読付き論文として掲載されたため。くわえて、1930年代における彼の民主主義論の発展を著作・草稿を検討して明らかにした論文も同じくJournal of Economic Issuesに査読付き論文として掲載されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
Association for Evolutionary Economics(アメリカの進化経済学会)の会員と共に、J.R.コモンズの制度経済学における信用経済の民主主義的統治についての国際的な共同研究を(現在、海外渡航ができないため)オンライン・ミーティングを通じて進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、コロナ禍において国内出張が一時的に限されていたり、海外渡航ができなかったりしたためである。2020年度で終了する予定の研究期間を1年延長したため、次年度使用額が2021年度分の支出予定額となる。これを、アメリカの進化経済学会(Association for Evolutionary Economics)会員との国際共同研究を進めるための費用(書籍代)および学会でそれを報告するための出張費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)