2021 Fiscal Year Research-status Report
小区分ごとの貧困層実態把握への統計的アプローチ---貧困・格差是正に向けて
Project/Area Number |
18K12758
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
廣瀬 雅代 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (30739199)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 統計的推測法 / 経験的ベイズ法 / 平均二乗予測誤差 / 小地域推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は, 2020年度に引き続き, 1) 集計データを用いた, 小区分ごとの実態把握のための統計的推定法に関して, 国際共同研究を行った. 具体的には, 平方根変換と逆正弦変換を目的変数とした経験的ベイズ推定量とその平均二乗予測誤差の二次漸近不偏推定量を陽に導出した. また, 提案する推定量が非現実的な推定値の発生をも回避することを示した. さらに, 新型コロナウィルス感染拡大の状況を受け, 都道府県別PCR陽性率の予測にも適用を図り, 統計的に有用な性質を持つ予測誤差に関する指標の推定量を陽に導出した. ある仮定の下であれば, パンデミック初期段階であっても従来法より信頼性の高い分析に貢献するのではないかと考えている. 特に2021年度は, 2020年度までの研究成果を論文の校正等の機会を通して, さらなる深みの追求を図った. その結果, 研究成果の国際誌への掲載決定に至った. 他の分野への小領域ごとの割合推定にも提案手法適用可能性を見出している. 実際この手法を用いて資料作成への適用可能性を吟味しており, 現時点までの研究成果の一部を複数の学会発表にて報告している. また, 2) 2020年度にonline publishedとなっていた学術論文に紙媒体版のページが付与された. この論文は統計科学のトップジャーナルの一つJournal of the American Statistical Associationに採択された論文であり, 頻度論的観点からの過去の提案手法をベイズ的観点からつなげるものである. そして, 3) 小領域ごとの推測法に関連し得ると考えられる統計的制御の研究についても行った. その研究成果を論文にまとめ, arXivへの投稿まで行っている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初新型コロナウィルス感染拡大状況が落ち着くと想定していたことから, 想定外のことも多く, 中々研究を進展させることができなかった. 特に, 渡航制限や出張自粛の考慮により, 共同研究等はオンラインやメイルで行う必要があり, 想定していたより難しい部分があった. その中でも個票データに基づく推測法の研究や実態把握のための提案手法を用いた資料作成への貢献に関しては, 進捗状況としてやや遅れていると言わざるを得ない. しかし, 延長1年間に進展の兆しを見出している状況にある.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず, 公的ミクロデータへの提案手法の適用を図り, 複数の分野の実態把握のための資料作成への貢献を行う. また, 個票データに基づく推測法の研究と小領域ごとの推測法に関連すると考えられる統計的制御の研究についても推し進めていく予定である.
|
Causes of Carryover |
2021年度も2021年度と同様に, 新型コロナウィルス感染拡大の影響により, 国内外への出張中止や自粛を余儀なくされた. それまでに想定していた予算の中には, 国内外で開催される学会や在外研究のための出張費等も旅費として多く含まれていた. そのため, 当該年度においても旅費に想定していた予算との大きな乖離が生じた. しかし, 研究の進捗状況もやや遅れていることから, 研究の進展のために今年度も予算を活用する. 主に, 国内打ち合わせ(可能な場合), 提案手法のデータ適用のための旅費(可能な場合), 論文校正費などに使用する予定である. 研究遂行のため必要な場合は, PC等の機器も検討する.
|