2018 Fiscal Year Research-status Report
垂直分離された公益事業における最適な組織間調整システムについての研究
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18K12771
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公益事業 / 最適組織 / 鉄道事業 / 水道事業 / 分業 / 効率性 / 取引費用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、鉄道事業および水道事業の最適組織について研究を行った。 第一に水道事業である。日本の人口は現在減少しており、この傾向は将来も続くと予想されることから、日本の水道事業は需要減少に対応するために合理化・コスト削減を迫られている。そのために、上水道と下水道の統合や水道事業の民間委託などの施策が進められてきた。しかし、これらの施策は種々の法律改正を伴う大がかりな対応策となりがちなうえ、すでに業界では広く取り入れられており、いずれは別の施策が必要になる。このような中で、全く手を付けられていないのが内部組織の変革である。水道事業の内部組織に焦点を当て、公式組織をどの程度細分化すれば良いのかについてのベイズアプローチの確率フロンティアモデルを用いて、費用と内部組織数の間の同時性を考慮した実証データ分析を行った。分析の結果、日本の水道事業はタスクを統合し、部門を細分化しない包括組織として再構築するほうがコスト削減につながることが明らかになった。 第二に、鉄道事業における最適組織の研究である。日本における鉄道事業は、インフラ整備部門と車両運行部門が統合された「垂直統合」の組織構造を持っている一方、ヨーロッパやイギリスなどではこれら両部門が別企業として独立した「垂直分離」の構造が見られる。垂直統合では部門間の調整が緊密に行えるメリットがある一方、垂直分離では車両運行事業に競争原理を導入することによるコスト削減のメリットがある。本年度は日本企業へのインタビュー調査及びイギリス企業へのインタビュー調査を行い、結果をとりまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでいるといえる。今年度は日本の水道事業のデータを用いた実証分析において、公益事業における内部組織の分業が費用に与える影響を分析した。これは水平的分業を対象にしており、鉄道事業などにおける垂直的分業との違いや共通点を比較するうえで役立つ結果を得られた。現在は鉄道事業のタスク分業と垂直的組織構造の在り方に関するインタビュー調査を実施中であり、すでに数社の企業で結果が得られていることから研究の進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は鉄道事業の垂直構造についてのインタビュー調査を進めていく。現在までに日本と英国でのインタビュー調査が終わっており、今後比較のためのドイツ・オランダ・フランスにおける鉄道事業のインタビュー調査を行う予定である。ここで得られた結果は、規制や政府の関与などの違いを文脈変数として、どのように最適組織構造が変化するかを比較するための定性的研究へとまとめられる予定である。
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Causes of Carryover |
すべてのインタビュー調査を本年度中に終える予定であったが、調査協力企業の都合により本年度の実施が困難となったため、インタビュー調査を次年度に行う。次年度でインタビュー調査はすべて終える予定である。
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Research Products
(7 results)