2020 Fiscal Year Research-status Report
国際機関予測の評価と民間経済主体への影響に関する研究
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18K12775
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土屋 陽一 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (70711620)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 経済予測 / 国際機関予測 / 期待形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国際機関が作成・公表する経済予測を検証することで、政策的な含意を得ることである。(1)従来研究対象とされてこなかった世界銀行、アジア開発銀行、欧州復興開発銀行の経済予測の評価を行う、(2)それぞれの国際機関予測が各国の民間経済主体の期待形成・予測形成に影響を与えているかを検証する。 第一に、経済見通しのデータを収集、データベースの作成を行った。研究対象の国際機関すべてについてデータベースの作成を終えた。 第二に、アジア開発銀行を対象とした研究を行った。研究の結果明らかになったことは、以下の通りである。(1)予測精度とバイアスは国ごとに、また変数ごとに異なる。(2)アジア通貨危機と世界金融危機は、GDPとインフレ率の予測精度を悪化させたが、経常収支の予測精度にはそのような影響は見られない。(3)アジア開発銀行の予測はおおむね偏りがない。(4)インフレ予測は効率的であるが、GDPと経常収支予測は効率的ではない。これらの結果は、アジア開発銀行が世界中の政策立案者や企業に信頼性の高い経済見通しを提供していることを示唆している。 第三に、世界銀行を対象とした研究を行った。研究の結果明らかになったことは、以下の通りである。(1)2008年の金融危機後、大多数の地域の次年度予測パフォーマンスは改善したが、一部の地域の当年度予測パフォーマンスは改善しなかった。(2)長期予測は過去10年間でほとんどが楽観的であり、特に金融危機後、次年度予測は保守的から楽観的に変化した。(3)予測パフォーマンスの改善度、保守性、楽観性は、一部の例外を除いて、地域、輸出入パターン、所得水準と強く関連していない。これらの結果は、予測利用者、特にこれらの国の政策立案者が、世銀の予測を慎重に利用し、過剰な投資をして経済成長や財政収支を不安定にしないようにすべきであることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベース作成が完了した。世界銀行に関する研究成果を論文にまとめて学術誌へ投稿した。アジア開発銀行に関する研究成果についても論文にまとめており、2021年4月には学術誌へ投稿できる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、アジア開発銀行に関する研究成果をまとめた論文を学術誌へ投稿する。第二に、世界銀行に関しては学術誌へ投稿済みの研究成果に加えて、危機予測の視点からの成果を得ていることから、論文へまとめて学術誌へ投稿する。第三に、国際機関予測を相対化するために一部の中央銀行予測に関する研究を行い、比較を行った論文を学術誌へ投稿する。以上をもって、本研究課題の研究が完遂される。
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Causes of Carryover |
理由:研究が順調に進捗し論文執筆が進んだため、年半に英文校閲のための費用を前倒して請求した。しかし、現在の所属大学への転出が内定したことから、転出に伴う準備のために予定していた論文が完成しなかったため。 計画:予定していた論文を完成させて英文校閲の費用に充てる。
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