2021 Fiscal Year Research-status Report
数量的空間経済学の発展:複数均衡,ネットワーク,政策評価
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18K12776
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
藤嶋 翔太 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50706835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 空間経済学 / ネットワーク / 政策評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心市街地活性化政策の地域属性を踏まえた評価及び政策の対象となる自治体を選定するための実用的なルールに関する研究を進めた.具体的な内容等は以下の2点である.
1. 推定結果の信頼性を高めるために,これまで操作変数として各地方自治体の公共施設の郊外化への取り組み具合を表す変数などを考えてきたが,操作変数の条件である外生性が満たされない懸念があった.そこで,地方自治体の公務員数のうち中央政府から当該自治体への出向者数が占める割合を新たな操作変数として作成した.出向者数(のシェア)は地方自治体の中心市街地活性化基本計画の認定の見込みに影響を与えるが,地方自治体の経済状況からの影響は直接は受けないという想定である.実際,出向者数は全国でばらついていて、中央政府と地方自治体の関わり方は多様であり,経済状況などで単純に決まっているとは考えにくいことを確認した. なお,操作変数の外生性については,非線形のモデルを考えているため直接的に統計的な検定を行うことは難しいが,一年前の中心市街地活性化基本計画の認定状況を説明変数に入れており,これも操作変数の条件を満たすことを踏まえ,線形化したモデルで過剰識別制約検定を行うことで議論を補強する形にした.実際,上記の出向者数に基づく操作変数は,過剰識別制約検定を通ることを確認した.
2. これまで,政策評価の対象となる地域経済変数として従業者一人あたり小売売上と人口あたり所得を考えてきたが,中心市街地活性化政策の効果を測る上で,この2つだけでは十分とは言えなかった.そこで,地価を新たな変数として追加したところ,地価についても,政策の効果には観察可能な属性をコントロールしても異質性(heterogeneity)があるという結果が統計的に有意な形で得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年8月にディスカッションペーパーを改訂し,追加の分析を検討する余地はあるものの,査読付き国際学術雑誌への出版に向けて論文を投稿する準備がほぼ整ったため.
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Strategy for Future Research Activity |
・政策評価の対象となる地域経済変数として地価を追加したものの,重要となる変数は他にもある.例えば,中心市街地活性化政策は雇用の創出を期待されているケースが多い.そこで,従業者数や事業所数も追加したいと考えている.その際,産業は政策の主要なターゲットである小売業をまず考えることにする. ・推定モデルの妥当性を確認する.具体的には,推定モデルとして2次式を用いているため,他の次数と比較してモデル選択の観点から妥当と言えるか確認する. ・地域経済変数に影響を与える地域政策は中心市街地活性化政策以外にもあるため,それら他の政策の効果をコントロールすることを検討する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の出張ができなくなったため.
使用計画:新型コロナウイルスの状況が落ち着けば,学会発表のための旅費に使用する予定である.また,学術雑誌に投稿した際の査読対応で必要になった場合は,地理情報システムや統計解析のソフトウェアの購入やリサーチ・アシスタントの雇用のために使用する予定である.
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