2019 Fiscal Year Research-status Report
製品に対する環境・安全規制がパーツ供給企業に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
18K12779
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
宮本 拓郎 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (30738711)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 研究開発 / サプライチェーンマネジメント / ポーター仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は実証分析研究と理論研究の2つのパートからなり、実証分析の方を先に進め、実証分析の知見を活かして理論モデルを構築するかたちで研究を進めている。実証分析は前年度に行った統計分析の結果をいろいろな角度から検討して、分析の頑健性(特に操作変数)のチェックを行った。また、理論研究では、前年度に取り組んでいたモデルよりもサプライチェーンでの顧客企業とサプライヤーの関係を考慮するモデルに変更することにし、モデルの構築を終え、分析を始めた。
理論研究のモデル変更は具体的には以下の通りである。メーカー(サプライヤー)が製品を直接消費者に売るのではなく、小売企業に売り、小売企業がメーカーの商品を消費者に売る状況を考える(メーカー・小売企業が複数のケースも考える)。この変更により、サプライチェーンでの顧客企業とサプライヤーの関係を考慮するモデルとなった。また、製品に関するR&Dの方をその成功を確率的に扱うことから、費用をかければ確実なリターン(製品の品質向上)が見込めるようにし、R&Dに関する設定を簡素にした。以上の変更は、モデルの焦点をR&D過程そのものよりも、サプライチェーン上の顧客企業とサプライヤーの関係性が製品の品質向上に寄与する投資(=R&Dとみなす)に与える影響に当てるために行った。
実証研究については、分析の頑健性検討を行った結果、操作変数としてふさわしい変数が手持ちのデータにはないと結論付けた。そして、操作変数に頼らず、取り組み要求がR&Dを促すかどうかを検証できる方法で検証した。温室効果ガスに関する分析結果は、要求の有無に関係なくR&Dを行う企業がそれなりにいることを示唆し、化学物質に関する分析結果は、要求がなければR&Dに取り組む企業は少なく、要求によってR&Dが多少促されるということを示唆すると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている大きな要因は以下の2つである。1つ目は、理論研究で分析するモデルを変更したことである。前年度に採用していたモデルは、製品に関するR&Dにより焦点を当てて、サプライチェーンでの顧客企業とサプライヤーの関係については捨象するものであった。分析を進めるうちに、サプライチェーン上での関係を考慮するモデルの方が、本研究には相応しいと判断した。研究実績の概要でより詳細に説明したようなサプライチェーン上での関係を考慮するモデルに変更した。今年度終了時現在、モデルの構築を終え、分析を始めた。以上のモデル変更のために、理論分析の進行が遅れることになった(モデル変更がなければ論文の草稿が出来上がっている予定であった)。
2つ目は、実証分析では妥当な操作変数を探すことと操作変数の妥当性を検証するのに時間がかかってしまったことである。「製品の環境負荷を下げるR&Dに対する態度」と「顧客企業から製品の環境負荷を下げる取り組み要求の受けやすさ」の両方ともに、データが取れない要素が影響を与える可能性が非常に高いと推測される(例えば、経営陣の環境問題に対する意識など)。このような場合に観察データを利用するならば、操作変数を用いて分析するのが王道であるので、操作変数手持ちのデータで操作変数として使えるものを探した。操作変数を探すのに時間を取られて、結局見つからず、操作変数に頼らない方法を採用することになった。そのため、研究の進行が遅れた。以上のように、実証研究・理論研究ともに遅れているので、全体としても遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
実証研究については、分析結果がだいぶまとまってきたので、これから分析結果から政策的含意を引き出し、論文の形にまとめて早急に投稿する予定である。
理論研究は、まずは、分析を早急に行い、その結果をまとめて(オンラインで行う可能性のある)夏秋の国内学会発表を行うことを目指す。しかし、新型コロナウイルス感染症対策でオンライン授業となり、その対応に時間がとられるので、(オンラインで行う可能性のある)夏秋の国内学会発表に間に合うように形にできるか微妙なところである。間に合えば、学会発表で得たコメントをもとに論文の改訂を行い、年度末までに査読付き学術雑誌に投稿する。間に合わない場合も年度末までに査読付き学術雑誌に投稿することを目標に論文を取りまとめる。
スケジュール的には、秋の学会発表に間にあわせるために、夏までは理論研究の方をメインに取り組む。学会発表用の準備が終わった後は、学術雑誌に投稿できる論文にまとめられるそうな方から優先的に取り組む。これまでの進捗から考えると、夏以降は実証研究をメインに取り組むことになると思われる。
|