2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K12786
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
會田 剛史 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センターミクロ経済分析研究グループ, 研究員 (40772645)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 要求水準 / 主観的厚生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、貧困と行動経済学的要因との間の相互依存関係である「貧困の罠」について、フィールド実験とミクロ計量経済学の手法を組み合わせたアプローチにより分析するというものである。これについて、今年度は主に以下の点について研究を進めた。 (1) 南アフリカの家計調査データを用いた主観的厚生指標の地域間格差に関する空間計量経済学的分析について、学会・セミナーにて発表を行い、所属研究機関のDiscussion Paperとして論文を公開した。本研究は主観的厚生の地域間格差を生む要因について、地域間の制度の違いを考慮しつつ、そのスピルオーバー効果を検証したものである。この論文についてはすでに英文学術ジャーナルに投稿中である。 (2) 昨年度に引き続き、「要求水準(level of aspiration)」と貧困との相互依存関係に関する分析について、文献サーベイとデータ分析を実施した。これはスリランカ農村における経済実験データを用いて、要求水準のレベルと各種貧困指標との関係性を分析するものである。ただし、本年度においては他の研究に大きな進展があったために、この研究については予定よりもやや進捗が遅れている。 (3) 以前より実施しているフィリピン・ネパールにおけるコミュニティの「居場所」作りの効果測定に関する分析を進めた。これは地域住民が集まって自発的な活動を行うための場所を提供することが、社会関係資本や精神・心理的アウトカムに与える影響を分析するものである。基本的な分析結果は出揃っており、現在は論文執筆に向けて共同研究者と協議中である。 (4) 本研究課題に合致する新たな調査・実験の可能性を探るために、カンボジア農村にて現地調査を実施した。調査の結果、農業技術の普及プロセスの分析や保険衛生プログラムの効果測定などが候補として挙がっている。これについても共同研究者との協議を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主観的厚生指標の地域間格差に関する空間計量経済学的分析について、学会・セミナー報告を行い、Discussion Paperとして公開することができた。要求水準に関する研究についてはやや進捗が遅れているが、フィリピン・ネパールの「居場所」作りの効果に関する分析が進んだことや、新たな調査・実験の可能性が生まれたことからも、総合的にみて順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究実績を踏まえ、それぞれの研究について以下の方針で進めていく予定である。 (1)の主観的厚生指標の地域間格差に関する論文については、すでに英文学術ジャーナルに投稿中である。査読の結果を踏まえて論文の改訂をするなどして、掲載を目指したい。 (2)の要求水準と貧困の関係性の論文については、分析を進めて論文にまとめた上で学会・セミナー等で報告し、フィードバックを得ることで分析の精度を高めていきたい。また、昨年度に引き続き、要求水準の決定メカニズムに関する理論モデルに基づいた構造推定アプローチによるデータ分析を行うことも目標としている。これにより、既存の理論研究と実証研究との間のギャップを埋めることを目指す。 (3)のフィリピン・ネパールにおけるコミュニティの「居場所」作りの効果測定に関する分析については、すでに基本的な分析結果は出揃っている。今後は共同研究者と協議を進め、分析の精度を高めるとともに、先行研究のサーベイなどを行い、論文の執筆を行う。この研究についても、適宜フィードバックを得ながら改訂を進め、英文学術ジャーナルへの投稿を目指したい。 (4)の新たな調査については、先述のように農業技術の普及プロセスの分析や保険衛生プログラムの効果測定などが候補として挙がっている。これについては、新型コロナウィルスの問題があり、調査の可能性自体が危ぶまれる。現地の研究協力者と協議を進め、慎重に検討していきたい。
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Causes of Carryover |
3月に予定していたイギリスにおける学会発表が、新型コロナウィルスの影響により中止になった。また、予定外の研究の進捗があったため、新たな調査を実施するためのスケジュールに見直しが必要となった。 次年度も新型コロナウィルスの影響により調査の実施計画が立てにくい状況にあるが、場合によっては研究期間を延長するなどして、調査・学会報告を行い研究を進める予定である。
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Research Products
(2 results)