2019 Fiscal Year Annual Research Report
National Health Insurance and Unifying the Two Tax Bases of Municipal Income Tax in Japan
Project/Area Number |
18K12790
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
宮崎 雅人 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20553069)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地方税 / 国民健康保険 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,国民皆保険成立とほぼ同時期に行われた市町村民税所得割の課税方式統一と標準税率導入という減税政策に着目し,計量分析手法を用いて,地方税制の制度変更がどのような効果を持っていたのかを明らかにした。制度変更以前,但書方式と呼ばれる住民負担の大きい課税方式を採用していた市町村においては,課税方式が本文方式に統一され,標準税率導入によって税率が低下することによって市町村民税の減税が行われ,特に低所得者の租税負担が軽減されることとなった。そこで,これが国民健康保険料納付に与えた影響を検証した。 本研究の目的は次の2点であった。第1に,これまで歴史・制度研究の中で十分に明らかにされてこなかった制度の効果を実証的に明らかにすることであった。第2に,日本の福祉国家体制の重要な構成要素である国民皆保険が可能となった要因を従来とは異なる視点から明らかにすることであった。 これらの目的を達成するため,2019年度においては,前年度に構築されたパネルデータに基づいて,1964年度の市町村民税所得割の課税方式統一と標準税率導入が国民健康保険料収納率に与えた効果の推定を行った。具体的には,地方税制の制度変更は中央政府によって行われたものであり,自治体財政への外生ショックとみなしうるため,制度変更前後の市町村間の差異を利用した「差の差」(DID)分析を行った。 分析の結果,市町村民税所得割の課税方式の統一は,国民健康保険料収納率に対してプラスの影響を与えていたことが明らかになった。課税方式の統一という減税によって住民(国民健康保険の被保険者)の可処分所得が増加し,保険料を納めることができるようになり,収納率が上昇したものと考えられる。このことは,市町村民税所得割の負担の地域間格差を是正するための減税政策が国民皆保険の実現にも寄与したことを示しているといえる。
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