2019 Fiscal Year Research-status Report
労働市場政策および学校教育施策に関する媒介分析による政策効果のメカニズムの解明
Project/Area Number |
18K12794
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
菊地 信義 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (40775847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 政策評価 / 媒介分析 / 間接効果 / 因果推論 / 保育政策 / 学童保育 / ミクロ計量経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、媒介分析 (mediation analysis) と呼ばれるプログラム評価法を応用して、労働市場政策や学校教育に関する施策の処置効果とそのメカニズムを実証分析するものである。処置変数 (treatment variable) の因果効果の媒介となる変数 (mediator) の影響を分析することで、より多くの対象・状況に有効であるような政策の条件が何かを明らかにすることを目標としている。 今年度も、子供が0から1歳時点での保育所利用が、小学1年生時点での母親の就業確率と家計所得に与える因果効果について分析を進めた。特に、いわゆる学童保育の利用の有無によって、どのように保育所利用の影響が異なるのかを明らかにするため媒介分析を行った。具体的には、市区町村レベルでの認可保育所の新設と学童保育の定員の変化を操作変数として、逆確率重み付け法によりセミパラメトリックに間接効果 (indirect effect) を推定した。 操作変数は、過去の1人当たり保育所定員比率をコントロールした下では、処置変数に対して統計的有意に正の影響を与えることがわかった。また処置効果については、昨年度のパラメトリックな分析によるものと整合的な結果を得た。保育所利用が母親の就業に与える効果の学童保育利用に関する間接効果は正であった。また、媒介変数の値によって、効果が異質であることが示唆された。これらの成果をまとめ、労働経済学の研究会などで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
操作変数法による分析を進めているが、直接・間接効果の逆確率重み付けによる推定が頑健な結果を得るまでに至っていない。理由は大きく分けて二つある。第一に、一般化積カーネル (generalized product kernel) 関数に基づく条件付き累積分布関数や条件付き密度関数の推定結果が、特定のバンド幅の下での結果にとどまっているため。第二に、媒介変数を離散変数としたモデルで、操作変数の効果が小さいことで識別可能な共通のサポートが狭く、推定する意味のある処置効果を識別することが難しかったため。それゆえに、分析結果をワーキングペーパーなどにまとめ公表するという目標の達成に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗中の研究については、操作変数法によるセミパラメトリックな間接効果の推定をさらに進める。バンド幅の選択による結果の頑健性を評価する。また、媒介変数を連続変数にしたモデルについても分析を行う。得られた結果は、日本経済学会、東京労働経済学研究会などの国内外の学会・セミナーで積極的に発表を行い、そのフィードバックに基づいて論文を改訂することで、国際学術雑誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れ、予定していた英文校正の費用が生じなかったため。次年度には、論文の英文校正費及び学会報告のための旅費として使用する予定。
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