2021 Fiscal Year Research-status Report
利他的行動の年齢効果と世代間継承、戦略的資金調達に関する計量実証研究
Project/Area Number |
18K12795
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
奥山 尚子 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (80617556)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 利他的行動 / 寄付 / ファンドレイジング / 年齢効果 / 寄付の異質性 / 消費 / 資産保有 / 労働供給との関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度の研究実施状況報告書「今後の研究の推進方策」で言及したとおり、①アンケート調査の実施と回収した調査データを使った分析、②分析結果の学会やセミナーでの報告、③論文とりまとめと査読付学術誌への投稿に取り組むことを当初の予定としていた。しかしながら、①については、諸事情により調査設計や時期について大幅な見直しや調整が必要となり、次年度に持ち越して実施せざるを得なくなった(詳細は「次年度使用が生じた理由と使用計画」にて説明)。従って本年度は、②および③に取り組み、加えてテーマごとの既存研究のサーベイを再度行った。 具体的には、2020年度からの継続として、都道府県別のマクロデータを使った、寄付と消費、資産保有、労働供給の関係に関するパネル分析に取り組んだ。加えて、このテーマについて、個票データを使ったパネル分析を行い、分析結果の比較や頑健性の検証、検証仮説に対する知見の精査に注力した。そして、世帯の寄付支出に対する消費支出、貯蓄、雇用状況、地域の向社会的な慣習・特性との関係を整理し、本研究課題の特徴としている寄付行動の年齢効果と世代間継承、公益・非営利活動における戦略的資金調達について、政策的、実務的なインプリケーションについても検討し、論文に取りまとめて学術誌に投稿した。年度末までの採択、公表には間に合わなかったが、現在、査読コメントを踏まえて論文を改訂中である。 昨年度に引き続き、本年度も新型コロナウイルス感染症の影響で、報告を予定していた学会・セミナーの中止やオンライン実施への変更があり、これらの参加に係る旅費や参加費等の支出予定がなくなり、研究経費を大幅に見直すこととなった。そのため、本研究課題の申請当初の経費執行計画を修正・調整し、計画遂行に努めた。アンケート調査については、次年度の実施へ向けて、準備や内容の精査を継続しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題での計量分析の実施には、世帯構成や労働経験、経済的選好を含む主観的指標に関する詳細な情報や、操作変数の候補となる情報が必要である。既存データではこれらの必要な情報について一部しか含まれていないため、新たにアンケート調査を実施して、独自の個票データを得る必要がある。そのような理由からアンケート調査を計画しているが、実施に至っていない。現在まで、調査設計のための情報と知見の収集、既存データを使った予備分析、その分析に関する論文執筆や発表報告などに時間を要したこと、加えて、新型コロナウィルス感染症の影響で研究計画(スケジュールや経費など)を大幅に変更せざるを得なくなり、アンケート調査の時期や内容、対象、調査委託会社の選定についても再検討や調整をする必要も出てきたことが理由である。アンケート調査実施に至っていない点で、当初の研究計画より進捗がやや遅れている。 ただし、これまでの既存調査のデータを使った分析については、学会発表や論文執筆・査読付学術誌での発表などにより研究成果のとりまとめと発信を行っており、また、これによりアンケート調査を精緻化するための具体的な対策に関する情報やポイント、分析の枠組みとしての理論的説明や計量的手法に関する視座を得ている。調査設計から実査、分析に至る今後の作業を効率的に進めるための状況を着実に整えており、次年度での実施へ向けて準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、事業期間を延長しての実施年度となる。アンケート調査を実施し、収集した調査データを使った計量分析を行い、国内外の学会やセミナーで報告し、論文に取りまとめて査読付学術誌に投稿する。調査委託会社の選定を見直しに伴う調査費用や設計、アタック数などの再調整、交渉が必要となる可能性があるが、これらへの対処についてはすでに着手しており、確実に調査実施できるように引き続き準備を進めていく。質問項目や実証モデル等はほとんど固まっているので、効率的に交渉や調整を進めていけるものと考えている。 2021年度は、最近の国内外の社会情勢も踏まえて、本申請課題の新規性や独自性、学術貢献を改めて考えるべく、いくつかのテーマごとに先行研究のサーベイを行った。これについても、サーベイ論文等に取りまとめて学術誌に投稿・発表することにより、成果発信したい。
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Causes of Carryover |
予定していたアンケート調査について、新型コロナの長期化とその影響により、質問項目の設計、実施のタイミング、調査委託会社の選定などの諸点において大幅な見直しが必要となった。分析に耐えうる良質のデータを確保し、研究目的をより精緻に達成するための見直しであり、調整や検討の結果、実施時期をずらさざるを得なくなった。来年度に調査を実施する予定であり、調査設計・実施に係る費用として今年度充当する予定であった金額を、次年度に同様の費目で使用したい。
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