2018 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on Gender Differences of Decision Making and Human Capital Accumulation Related to Scholarship and Student Loan
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18K12799
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
萩原 里紗 明海大学, 経済学部, 講師 (40754362)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 奨学金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、就学、就業、奨学金受給の意思決定が男女間でどのように異なるのかを比較することによって、人々の自由な選択を可能にし、持続可能な奨学金制度設計のモデルケースを示すことである。 この目的を達成するために、本年度は主に以下の2つの研究を行った。第一に、政府が実施する貸与型及び給付型の奨学金制度について国際比較研究を行った。この研究では、わが国の現状の概観、諸外国との制度比較、関連する文献のレビューを行っている。研究成果は国内のジャーナルに掲載された。第二に、奨学金が卒業後の年収に与える影響について、わが国のデータを用いて実証分析を行った。この研究では、学歴や就業形態などの諸属性の影響や内生性の影響をコントロールした上で、無利子奨学金受給者、有利子奨学金受給者、そして非受給者を比較し、奨学金受給が逆選択やモラルハザードを引き起こしているかについて検証している。研究成果は、国際学会において報告を行い、一つ目の研究と同様に国内のジャーナルに掲載された。 これら2つの研究を通じて、今後の研究を行う上で、以下の2点について進捗が見られた。第一に、諸外国との制度比較や関連研究のサーベイを通じて、わが国の奨学金制度の特徴が明らかになり、次年度以降のシミュレーション分析の際、その特徴をモデルの中に明示的に組み込むことで、奨学金制度の効果を検証することが可能になった。第二に、実証研究からは、奨学金受給者において奨学金の種類ごとにアウトカムに違いが見られたことから、奨学金の種類を考慮することの重要性を再認識することができ、そのことを次年度以降のモデル設計やデータセット構築に活かすことが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成度を上記のとおり評価した理由として、以下の2点が挙げられる。第一に、本年度は、国際学会での発表を通じて、奨学金制度について海外の研究者と議論することができた。このことは、諸外国との制度比較や関連研究のサーベイを論文にまとめ、国内ジャーナルに投稿する際に活かすことができたことに加え、わが国の奨学金制度の特徴をモデルに組み込むことにも役立ち、次年度以降の研究を進めることに寄与すると考えられる。第二に、本年度の実証研究を通じて、奨学金の種類による影響の違いをモデル設計やデータセット構築に反映させることが可能になった。このように、次年度の研究を進めるうえで必要な改良ができたこと、また、サーベイ研究や実証研究の成果が国内ジャーナルに掲載されたことを踏まえて、研究は順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を活かして、次年度以降は準備してきたモデル及びデータセットを用いて、モデルが観測データの動きを説明できているかを確認し、よりフィットのよいモデルに調整する作業を進めていく。この調整が完了した後、給付型奨学金や所得連動返還型無利子奨学金による影響をシミュレーション分析によって明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、予定していた金額よりも少ない予算で物品の購入、学会発表、そしてジャーナルへの論文投稿ができたため、次年度に繰り越しを行っている。次年度も引き続き、繰越金を含めた研究費を活用し、主に海外ジャーナルへの論文投稿を行っていく予定である。その際には、本年度に比べて英文校正費や投稿料などの面で支出が増えることが予想される。また、執筆した論文に対して海外の研究者からのコメントを求めることも必要となることから、国際学会などでの研究発表に必要な旅費や参加費などの支出に研究費を使用していくことを計画している。
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