2019 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on Gender Differences of Decision Making and Human Capital Accumulation Related to Scholarship and Student Loan
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18K12799
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
萩原 里紗 明海大学, 経済学部, 講師 (40754362)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 奨学金 / 教育機会の不均等 / 人的資本蓄積 / 男女間所得格差 / 動学的最適化モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
男女における就学、就業、奨学金受給の意思決定の違いを明らかにするために、本年度は主に以下の4つの研究を実施した。 第一に、男女間賃金格差に関する国際比較研究を行った。この研究では、日本と台湾を比較し、両国における格差の違いや学歴の格差拡大に与えるインパクトを検証している。第二に、グローバル化による人口構造の変化を通じた就学行動への影響をみるため、日本人の子どもと外国人の子どもにおける高校進学格差に関する研究を行った。この研究では、格差拡大に対する家庭環境や経済状況の寄与度を検証している。第三に、定年後の格差の状況を把握するために、高齢者の貧困に関する研究を行った。この研究では、これまでの就業経験や婚姻状況による収入・所得・資産に与える影響を検証している。第四に、奨学金と幸福度の関係に関する研究を行った。この研究では、1984年から開始された第二種奨学金が受給者のその後の幸福度に与える影響を検証している。以上の研究成果は、ディスカッションペーパーや国内外の学会を通じて公表された。 これら4つの研究を通じて、今後の研究を行う上で、以下の3点について進捗が見られた。第一に、学歴は男女間賃金格差を拡大する要因として影響し続けていること、高校進学格差が家庭環境や経済状況によって生じていることが明らかとなり、これらの結果を就学支援策の効果検証の際のケース分類に活かすことが可能になった。第二に、定年後の生活にこれまでの就業経験や婚姻状況が影響していることから、動学的分析の必要性を再確認することができ、次年度以降のモデル設計やデータセット構築に活かすことが可能になった。第三に、有利子奨学金は返済負担が重いことにより、受給後の幸福度を下げていることが明らかとなり、その知見を次年度以降のシミュレーション分析の際の効用関数の設定に活かすことが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成度を上記のとおり評価した理由として、以下の2点が挙げられる。第一に、本年度は、ディスカッションペーパーや国内外の学会を通じて研究成果を公表したことにより、格差や奨学金に関するコメントを国内外から得ることができた。このことは、わが国の格差の発生要因と奨学金制度の特徴をモデルに組み込むことに役立ち、次年度以降の研究を進めることに寄与すると考えられる。第二に、わが国における格差の現状把握を通じて、奨学金による支援策の効果の違いをケースごとに検証することができるモデルの設計やデータセットの構築が可能になった。このように、次年度の研究を進めるうえで必要な改良ができたこと、また、研究成果を国内外で公表したことを踏まえて、研究は順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を活かして、次年度以降は改良してきたモデル及びデータセットを用いて、モデルが観測データの動きを説明できているかを確認し、よりフィットのよいモデルに調整する作業を進めていく。この調整が完了した後、給付型奨学金や所得連動返還型無利子奨学金による影響をシミュレーション分析によって明らかにする。その際、より現実的な政策提言が可能なように、家庭環境や経済状況など、ケースごとに細かく分類して研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、予定していた金額よりも少ない予算で物品の購入や学会などを通じての研究成果の公表ができたため、次年度に繰り越しを行っている。次年度も引き続き、繰越金を含めた研究費を活用し、主に海外ジャーナルへの論文投稿を行っていく予定である。その際には、本年度に比べて英文校正費や投稿料などの面で支出が増えることが予想される。また、執筆した論文に対して国内外の研究者からのコメントを求めることも必要となることから、学会などでの研究発表に必要な旅費や参加費などの支出に研究費を使用していくことを計画している。
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