2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on Gender Differences of Decision Making and Human Capital Accumulation Related to Scholarship and Student Loan
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18K12799
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
萩原 里紗 明海大学, 経済学部, 講師 (40754362)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 奨学金 / 教育機会の不均等 / 人的資本蓄積 / 男女間所得格差 / 動学的最適化モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
男女における就学、就業、奨学金受給の意思決定の違いを明らかにするために、本年度は主に以下の研究を実施した。 男性のみを対象として、奨学金受給による就学、正規就業、非正規就業、無業などのその他といった選択に対する影響を検証した。この研究では、女性と比較して、結婚や出産の影響が少ない男性の就学・就業選択に注目し、返還型奨学金における無利子奨学金と有利子奨学金の別、奨学金受給期間の別によって、選択に違いがみられるかについて分析した。また、シミュレーションも行い、定額返還方式と所得連動返還方式のどちらが返還者にとって好ましいかについて検討した。 この研究を通じて、今後の研究を行う上で、以下の2点について進捗が見られた。第一に、結婚や出産の影響が少ない男性の就学・就業選択をモデル化し、奨学金受給による影響について検証することで、奨学金受給の比較的純粋な影響を観察することができた。このことは、現在進行中の結婚・出産の影響も含めた女性の就学・就業選択に関する分析の結果との比較を可能にし、性別による違いがどのような選択の違いを生み出すのかについて検討することに役立つ。第二に、就学、正規就業、非正規就業、その他に選択肢を分けることで、各状態に対する影響の違いを明らかにすることができた。このことは、奨学金受給者の選択における特性を把握することにつながり、どのようなケースでは返還が難しくなり、どのような対処が有効かといった具体的な対策を検討することに貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成度を上記のとおり評価した理由として、以下の2点が挙げられる。第一に、本年度は、ディスカッションペーパーを通じて研究成果を公表したことにより、格差や奨学金に関する具体的なコメントを得ることができた。このことは、データの動きをうまくフォローする、パフォーマンスの高い、より現実に即したモデルの構築に役立ち、次年度以降の研究を進めることに寄与すると考えられる。第二に、女性と比較して、結婚や出産の影響が少ない男性の就学・就業選択について分析することで、比較的選択が自由に行える場合の奨学金受給の影響を確認することができた。このことは、次年度以降にまとめる、制約があるため自由な選択の難しい女性の就学・就業選択を分析するうえで、工夫すべき点を明らかにした。このように、次年度の研究を進めるうえで必要な改良が進んだこと、また、研究成果を公表したことを踏まえて、研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を活かして、次年度以降は現在進行中の結婚・出産の影響も含めた女性の就学・就業選択に関する分析結果をまとめる。改良してきたモデル及びデータセットを用いて、モデルが観測データの動きを説明できているかを確認し、よりフィットのよいモデルに調整する作業を進めていく。この調整が完了した後、給付型奨学金や所得連動返還型無利子奨学金、返還免除等による影響を男女別にシミュレーション分析を行い、比較する。その際、より現実的な政策提言が可能なように、家庭環境や経済状況など、ケースごとに細かく分類して研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスによる移動制限により、当初予定していた国内外の学会への現地参加・報告が行えなかったため、次年度に繰り越しを行っている。次年度も引き続き、繰越金を含めた研究費を活用し、主に海外ジャーナルへの論文投稿を行っていく予定である。その際には、本年度に比べて英文校正費や投稿料などの面で支出が増えることが予想される。また、執筆した論文に対して国内外の研究者からのコメントを求めることも必要となることから、学会などでの研究発表に必要な旅費や参加費などの支出に研究費を使用していくことを計画している。
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