2018 Fiscal Year Research-status Report
介護職従事者の職業選択と労働供給の要因に関する実証分析
Project/Area Number |
18K12801
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
長谷部 拓也 上智大学, 国際教養学部, 准教授 (60748896)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 介護職 / 労働供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は介護職への労働供給の決定要因を探る実証分析を行うことを目的としている。平成30年度は、介護職従事者の就業継続要因の分析を主に行った。介護職への従事者は比較的に離職率が高く、安定的な供給を確保できているとは言い難い。介護職員の安定的な人材確保は高齢社会における重要な政策課題であり、介護職からの離職行動や就業継続行動を定量的に分析することは重要な研究課題である。介護施設レベルでの離職に関する実証分析はこれまでにも行われている一方で、介護職に従事する個人レベルでの離職行動の分析はまだ充分に多くはない。その主な理由として、個人レベルの離職行動を把握するためには各個人を時系列で観察しているパネルデータの利用が望ましいが、その様なデータの入手は日本において困難である事が挙げられる。本研究では、Guell and Hu (2006, Journal of Econometrics)が提唱したクロスセクションデータを基にした疑似パネルデータでの分析手法を応用した個人レベルでの就業継続行動の分析を進めている。詳細な個人属性を含むパネルデータの構築は困難ではあるが、介護労働安定センターが毎年行っている介護労働者の就業実態と就業意識調査は介護労働者の個人属性を詳細に把握した、有効回答者数が2万人を超えるような比較的大規模なクロスセクション調査である。クロスセクション調査を数年分に積み重ね、疑似パネルデータ手法を応用した分析を行った。これまでの分析結果によると、月当たりの給与が有意に就業継続確率を上げることが確認された。また、疑似パネルによる顕示された就業継続行動を有意に説明する個人属性は、調査で尋ねている継続意思を説明する個人属性とは異なることを確認している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は個票データの整理及び統計プログラムの開発を行い実証分析の結果は得られた。この点においては概ね計画通りに研究は遂行されていると考えられる。当初の計画に於いては、個票データのみを用いた分析に加えて、政府統計からの集計値をデータに接続した分析を行うことも検討していた。しかしながら、現時点ではこうした追加的な分析を行えていない。この点を踏まえて、自己評価として「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、分析手法の緻密化および追加のデータを用いた分析を行うことを検討している。実証分析から得られた結果をまとめて論文の執筆を行う予定である。論文執筆と並行して学会報告などを通した他の研究者の方々との意見交換を予定している。頂いた意見を踏まえて分析を深化させる予定でいる。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では意見交換のための海外渡航費用を計上していたが、渡航スケジュールが合わないことで断念したことにより残額が生じた。
|