2018 Fiscal Year Research-status Report
新興国における国際資本フローと資本規制の有効性に関する理論的研究
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18K12815
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
高久 賢也 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (70649699)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マクロ経済政策 / 開放経済 / 国際資本フロー |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、第一に、資本規制に関する理論的研究および実証的研究に関する先行研究の調査を行った。特に、実証研究における先行研究の調査において、近年新たにつくられた資本規制の指標により、それまでの指標ではとらえきれなかった資本規制政策の変化をより正確に把握することが可能となり、金融危機後、新興諸国がこれまで考えられていた以上に、資本規制政策を用いていたことが明らかとなった。こうした実証研究の調査は、本研究の課題である資本規制の理論研究に重要な示唆を与えるものである。 第二に、2国モデルのフレームワークに基づいて、資本規制の有効性に関する理論研究を行った。具体的には、2国の DSGE モデル (Dynamic Stochastic General Equilibrium Model、動学的確率的一般均衡モデル)を構築し、不完備資産市場における資本規制の政策協調の効果について検討を行った。分析の結果、より不完備な資産市場の下では、資本規制の政策協調によって、金融市場の非効率性による(両国全体の)厚生損失を軽減できることが明らかとなった。これまでの2国の DSGE モデルに基づく政策協調の研究では、金融政策についての分析が主だったが、資本規制による分析は新しく、研究の蓄積も少ない。そのため、本研究の成果は、そうした新たな分野の研究に貢献するものと考えられる。また、本研究は、グローバル経済において資本の流出入に直面する国々(主に新興国)の適切なマクロ経済政策を考えていく上でも重要な研究であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、前述の2国モデルのフレームワークにおける資本規制の有効性に関する研究に取り組み、その成果をワーキングペーパーとしてまとめることができた。
"Gains from Policy Cooperation in Capital Controls and Financial Market Incompleteness" (with Shigeto Kitano), Discussion Paper Series, No.DP2019-01, RIEB Kobe University, January 2019.
引き続き改善を進め、海外ジャーナルへの投稿を目指していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、前述の先行研究の調査や2国モデルのフレームワークに基づく研究の成果を踏まえた上で、DSGE モデルに基づいた、国際的な資本流出入に直面する新興国における資本規制の政策的有効性に関する理論的研究をさらに進めていきたい。具体的には、過去の研究においても考慮してきた金融フリクションを導入した DSGE モデルを、新興国経済の特徴を踏まえた上で発展させ、資本規制の政策的有効性についてさらなる検討を行っていく予定である。金融フリクションが存在するモデルでは、企業部門や家計部門のバランスシートを通じた、景気変動におけるショックの増幅効果を表現できるため、そうしたフリクションがないモデルと比べて、国際的な資本流出入の影響を受けやすい新興国経済の特徴をより適切に捉え、資本規制の政策効果をより詳細に分析することができる。
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Causes of Carryover |
2018年度に購入予定であった物品の購入延期や購入物品の変更があったのに加えて、学会旅費の支出計画に変更があったため。 なお、2019年度の直接経費の支出計画は次のとおりである。 物品費/300,000円、旅費/375,995円
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Research Products
(3 results)