2020 Fiscal Year Research-status Report
Transformation of China's Rural Economy and Disorganization of People's Commune in the 1970s
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18K12821
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松村 史穂 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (50615953)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国 / 農村 / 1970年代 / 人民公社 / 食糧 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文「1970年代中国における農村経済の変容と食糧統制の弛緩」は、食糧供出率が1970年代に顕著に低下した理由を解明し、またそれに関連して、のちに人民公社体制の解体へとつながる農村経済の変化が、1970年代に発生していたことを指摘した。これらの分析を通じて、計画経済期末期の1970年代と改革開放期初期の1980年代に連続性を見いだせることを指摘し、鄧小平が実権を握った1978年を画期とみなす(1978年に多くの政策が180度転換されたと認識される)従来の中国現代史像に対し、修正を試みた。この論文は、田島俊雄氏(東大名誉教授)が編者をつとめる論文集『冷戦期の東アジア工業化―中国と台湾』に収録される予定である。 論文「糧食統購統銷制度下的農村幹部与農民:及其農業集体化之路」(食糧統制下の農村幹部と農民:農業集団化との関連に着目して)は、昨年度『農業史研究』誌上に掲載された日本語論文を中国語に翻訳したものである。1950年代前半、中国が食糧統制を開始した当初、政府による農地・農産物の数量把握が十全ではなかったために、供出ノルマが実際の収量にもとづいて設定されなかったこと、そうした不安定な状況のなかで農業集団化が進められたことが、かえって農民を集団化運動に駆り立てたことを指摘した。この論文は、東洋文庫から出版される『日中共研究中国当代史論集』に掲載される予定である。 上記2つの論文は、いずれも昨年度中に刊行される予定であったが、コロナ禍のもとで執筆者同士の意思疎通が滞った側面もあり、刊行実現に至らなかった。これらの刊行は2021年度に持ち越されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、準備作業としての論稿を一本、完成版としての論稿を一本、計二本の論稿を執筆するつもりであった。このうち前者はすでに刊行されているが、後者の刊行は実現していない。その理由は、この論稿を収録する論文集の刊行が後れているためである。コロナ禍にともなう業務の多忙化のなかで、執筆者同士の意思疎通は滞りがちであり、これが刊行の遅れの最大の要因であった。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに脱稿した論稿「1970年代中国における農村経済の変容と食糧統制の弛緩」で扱ったのは、中国のなかでもとりわけ富裕な上海市・江蘇省の農村経済であった。ここで詳しく検討できなかった貧困地域の農村経済について、現在調査・執筆中である。具体的には、食糧消費・現金収入のいずれの指標においても全国最下位であった貴州省に焦点を当て、資料収集・解読・執筆を行っている。目下のところ、資料は、勤務先の北海道大学図書館にある貴州省志・県志や、国立民族学博物館図書室に所蔵される『貴州日報』を収集している。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していたアメリカやオーストラリアでの資料収集が、コロナ禍により中止を余儀なくされた。2021年度においても引き続き海外出張を行える可能性は低いため、残った「旅費」「その他」を国内での出張旅費や書籍購入にあて、資料収集を行う予定である。
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Research Products
(1 results)