2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on British Railway Engineers: Focusing on Competitiveness, Cooperation, and Networking between Engineers
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18K12830
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
冨田 新 国士舘大学, 経営学部, 准教授 (50611810)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イギリス鉄道業 / 鉄道技術者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、イギリス鉄道技術者のデータベース構築を通して、その関係性・ネットワークを明らかにし、彼らのルーツと役割・業績・影響力について、鉄道業の生成・発展との関連の中で再評価することを目的としている。これまで、18世紀から20世紀にかけての鉄道技術者のリストについて、氏名・誕生年・死亡年・出生地・主な職業・親の氏名と職業、教育、徒弟制度利用状況、調査・計画立案・建設・監督等に関与した鉄道会社名と肩書および期間、特許取得状況、出版物、パートナーその他関連情報等を入力・アップデートする作業を行ってきた。そして、技師の関係性分析を通して、土木技師と炭鉱・機械技師ネットワークについて、排他的・競争的である一方、時に協調的側面も有しており、その関係性は極めて複雑であることを明らかにしてきた。 これらの成果の一部は、2021年12月14日(火)に開催された国士舘大学経営研究所令和3年度第3回研究報告会(国士舘大学)において、「日本における鉄道の受容と管轄権問題」として報告し、特にお雇い外国人として日本の鉄道建設に携わったイギリス人鉄道技師の経歴や役割について論じた。また、2022年3月12日(土)に開催された鉄道史学会2021年度第3回例会(オンライン開催)において、「19世紀後半におけるイギリス鉄道技師」として報告を行い、貴重なフィードバックを得た。 本研究は、鉄道技術者の競争と協調という二つの視点に着目し、産業革命期以降の技術者でマクロレベルの大発明を担った発明家・技術者だけでなく、これまであまり重視されてこなかったミクロレベルの標準的発明家・技術者についても網羅し、鉄道業に関する知識・技術の普及とそれを可能にした社会的・人的資本ネットワークの形成・発展をよりダイナミックな視点から明らかにしようとするところに意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
リスト化した18世紀から20世紀にかけての鉄道関連技術者について、氏名・誕生年・死亡年・出生地・主な職業・親の氏名と職業、教育、徒弟制度利用状況、調査・計画立案・建設・監督等に関与した鉄道会社名と肩書および期間、特許取得状況、出版物、パートナーその他関連情報等を入力・アップデートする作業を行ってきた。これらの関係性については、定性的な分析手法を用いて進めており、対象となる技師数も多数であるため、確認作業にかなりの時間を要している。 技術の進歩という点では、Mokyr(1990, 1991)、Allen(2009)などのマクロレベルの発明とミクロレベルの発明という分類を用い、特に本稿ではマクロレベルでの発明が実用化され普及するためには、続くミクロレベルの技術改良が持続的に続く必要があることを重視している。マクロレベルの研究者は数名程度であるが、ミクロレベルの技術者は多数存在しており、マクロレベルの技術者を軸とし、彼らに直接あるいは間接的に関連するミクロレベルの技術者を精査することが必要となる。この過程で、特にイギリス土木学会(ICE)や機械技師協会(IMechE)の会長を経験した技師を結節点とする技術者ネットワークの形成について明らかにすることを進めており、研究成果の一部は上述の通り学会や研究会において報告を行った。 なお、今年度は、現在分担執筆中の日本の『鉄道百五十年史』の第1章第1節~第5節の執筆・修正に相当の時間を要し、本研究を進める上で影響があった。これまで第1節~第5節まで全ての執筆を終え、現在編集責任者からのフィードバックに基づく修正作業を進めており、本研究を進める上でも一定の影響はある。また、他にも『鉄道史大事典』の執筆にも参加しており、本研究成果も反映させながら引き続き執筆・修正を進めることにする。
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Strategy for Future Research Activity |
18世紀から20世紀にかけての鉄道技術者データの構築について、引き続き更新作業を進める必要がある。彼らの氏名・誕生年・死亡年・出生地・主な職業・親の氏名と職業、教育、徒弟制度利用状況、調査・計画立案・建設・監督等に関与した鉄道会社名と肩書および期間、特許取得状況、出版物、パートナー、その他関連情報について、随時データの更新作業を進める。そして、構築したデータを基に、各種人物事典や技術者の伝記など二次資料も用い、技術者の公式あるいは非公式の関係性・ネットワークについて明らかにする。また、英公文書館や国立鉄道博物館等において収集した史資料に基づき、鉄道業の生成・発展・展開の中での彼らの業績と役割についても再評価する。 さらに、イギリス鉄道技術者の海外、特に日本やアメリカの鉄道建設への影響力について分析し、技術者と鉄道業の生成・発展をグローバルな視点からダイナミックに捉え直す予定である。このため、引き続き公文書館、技術者関連団体などの所蔵史資料を調査・収集し、分析を進める。19世紀後半以降の日本の鉄道業の形成・発展については、イギリスからの技術導入およびその担い手としてのイギリス人技術者の存在が重要となることから、グローバルな視点からイギリス以外の国との関係性も踏まえ、彼らの動向・役割・業績・影響力について明らかにする。また、アメリカの鉄道技術については、19世紀後半以降、急速にイギリスの技術にキャッチアップし、それを追い越すまでに発展するため、これがどのようにして可能になったのかについて明らかにすることが必要である。 最後に、これまでの研究成果をまとめ、学会報告や学術誌・紀要への論文投稿を行うことを通して、内容のブラッシュアップを図るとともに、最終報告書としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け国内および海外への研究出張を見合わせたため、その分の旅費が余ることとなった。これについては、新型コロナウイルス感染症の収束状況にもよるが、出張が可能となった際には、迅速に出張を行い、処理する。
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