2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12837
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大沼 雅也 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30609946)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イノベーション / ユーザーイノベーション / 医療 / 産学連携 / 技術経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、昨年度に続き、二つの作業を中心に研究を進めた。具体的には(1)専門家ユーザーによる革新過程への関与に関する理論的な考察と、(2)医療の手技や技術の発展・普及過程に関する事例のデータ収集・分析である。前者に関しては、個人レベルの概念(役割アイデンティティや志向性)に着目しながら、どのような専門家が、どのような革新活動に対して関わりを持つのか、という問いについて理論的な検討を行ってきた。特にこの年度には、質問票調査の実施に向けて、変数の操作化を念頭に置きながら、概念的な検討を進めた。加えて、社会的な変革過程に関する分析枠組みの検討として、社会運動論を中心に整理を進めた。そのような取り組みの中で、ミクロ(個人)、メゾ(集団、組織、組織間)、マクロ(社会・産業)という各レベルとその相互作用を考察するための理論的枠組みの導出を試みてきた。 後者については、PCIと呼ばれる循環器領域の手技の革新過程に関する各種資料を収集し、分析を進めてきた。具体的には、当該行為の普及や発展に関するデータの収集・整理や、その背後で展開される医学・生物学研究の発展とそれに伴って生じる診療ガイドラインの変化、企業による技術開発活動の変遷といった要素を検討してきた。加えて、各アクターを取り巻く環境の変化にも着目し、専門医制度の設立・変遷や、各種知識の普及媒体としての専門家コミュニティの役割について資料の収集・分析を行ってきた。これら一連の作業成果の一部については、二本の論文として既に公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の作業は、おおむね順調に進展している。当該年度は、理論的な整理を集中的進めることができ、おおよその全体的な整理の目途がついてきた。またインタビュー調査の準備として進めてきた資料の収集、現象の確認作業を着実に進めることができた。さらに、ミクロレベルの変数間関係について、質問票調査の実施を計画し、その作成作業も順調に進めることができた。他方で年度内に執筆を終える予定であったワーキングペーパーの完成がやや遅れている。ただし、その遅れは、追加的な調査や資料収集の必要性から生じたものであって、研究の進展が遅れているとまでは言えない。したがって、全体として順調な進展であったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度は、これまでの検討を踏まえ、集中的なインタビュー調査と質問票調査を実施し、年度末にはまとまった成果を出す予定であった。しかし、新型コロナウィルスの影響により、本研究が対象とする医療従事者に対するインタビュー調査や質問票調査を実施することが難しい状況にある。また、報告を予定していた国際学会が中止になる等、研究成果の公表の時期や方法についても影響が出ている。さらに、学内への立ち入りが制限させていることから、資料の収集に必要な人件費の使用についても計画の見直しを行っている。いずれにしても、今後の状況を見ながら柔軟に対応をしていくが、現時点では理論的な検討のさらなる掘り下げと、これまで得られた知見を論文やワーキングペーパーとして仕上げていく作業を中心にせざるを得ない。状況が好転し次第、調査を実施する計画であるが、場合によっては、一部の研究遂行を次々年度に延期する可能性がある。
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Causes of Carryover |
想定していたほどに資料の印刷・コピー代がかからずに若干の繰り越しが生じた。本使用額分については、次年度の該当費用として使用する計画である。
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