2018 Fiscal Year Research-status Report
Searching for the elements of emergent strategy: an empirical study of start-ups and multinationals
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18K12847
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
琴坂 将広 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (20706569)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 創発的な戦略 / 創業戦略 / アントレプレナーシップ / 経営戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度となる本年度は、創発的な戦略の研究を進めるため、スタートアップ企業の調査の土台となる協力企業との連携体制を構築した。また、その連携体制を基盤として、12名の著名起業家の創業と成長のストーリーに関して、二次情報を網羅的に収集し、また関係者に対するインタビュー調査を実施した。 その上で、創発的な戦略の背景となる起業環境、また起業家のネットワークに関しての調査研究を進めるため、3件の国際共同研究を立ち上げた。これらは起業家の創業環境に注目した研究ではあるが、同様に起業家がどのように最終的な戦略を構築するに至ったかに関する情報収集を主な活動としており、本研究プロジェクトの大きな糧となった。 これらの活動の成果として、本年度は2019年夏に開催される国際カンファレンスに4本の論文を投稿し、2名の匿名査読者によるレビューを経て、そのうち3本が採択されるに至った。また、12名の著名起業家の創業と成長のストーリーについては、2019年夏までを目安にケーススタディとして取りまとめる目途がついた。これらはまた、2019年度末までに一般向けの書籍として出版する方向性で出版社と基本合意に至ることができた。 また特に著名起業家の創業と成長のストーリーの収集の成果に関しては、起業を志す若手起業家、起業家予備軍を対象とした一般向けの無償セミナーを企画し、6回にわたってそれを実施した。これらを通じて収集した情報を一般に広く発信すると同時に、逆に参加者がどのように事業計画を練りこみ、そして事業を開始していくかに関する具体的なプロセスを追うことで、より解像度の高い創発的な戦略策定プロセスの理解につながった。 このように、本年度は次年度に向けて、多面的な研究データの収集と協力体制の整備に成功し、またその成果の社会に向けた発信を開始した実りある一年間であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は情報収集に時間を費やす予定であったが、情報収集が当初の予定通りに進行したのに加えて、実務家との協業を通じてその調査結果を社会に還元する活動も開始することができた。また、調査結果を踏まえたカンファレンスペーパーが3本国際的に著名なカンファレンスに受理され、国際的な成果発信の文脈でも、次年度につながる活動成果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進としては、取りまとめたケーススタディをどのようにして国際的に評価されうる査読付き論文として完成させていくかが課題となる。同様に、調査結果をどのようにして広く社会一般に知らしめるか、それにより社会に貢献するかが課題となる。 特に国際学会に採択された3本については、学会での発表を基としてさらに磨きこみ、早期の出版を目指して次年度から学術誌への投稿を開始していく必要がある。また不採択となった1本については、不採択理由を述べた査読者のレポートを真摯に受けとめ、内容を改善する必要がある。 また、本研究は初年度にデータ収集と実務家との協力が順調に進展した半面、基礎的な文献の読み込み、最新の研究成果の取り込みと、それに基づいたリサーチクエスチョンの設定が後回しになりつつある側面がある。今後の追加的なデータの収集にあたっては、学術的な要請の高い情報を取捨選択して収集し、解像度の高い議論につなげていく必要がある。 さらに、これまでのデータ収集が二次情報の収集とインタビューに依存していたため、創発的な戦略の重要な要素である、より偶発的な要因が十分に把握できていない可能性がある。これらは今後の出版プロセスにおいて指摘される可能性が極めて高いため、現段階から十分な検討と必要なデータの収集を進めていく必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
実務家との共同研究が開始されたため、物品費について共同研究契約からの出費が可能となったこと、また図書を購入する予定であったが、その多くが大学図書館に所蔵があり購入の必要がなかったため、当初の想定よりも支出が軽減された。 来年度は研究助手をアルバイトで一名採用し、人件費の支出が増加する予定である。また国際学会への参加が増加するため、航空券以外の滞在費については研究費より支出予定である(航空券は私費にて支出予定)。
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Research Products
(7 results)