2018 Fiscal Year Research-status Report
予想外の技術発展が起きるメカニズムの解明:問題解決プロセスの視点から
Project/Area Number |
18K12850
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
久保田 達也 成城大学, 社会イノベーション学部, 准教授 (20634116)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 技術の延命 / 技術軌道 / 技術予測 / 問題解決プロセス / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、予想外に技術が発展した技術を分析対象に、予想外の技術発展が起きるメカニズムと、事前予測が困難である理由を、特に研究開発者の問題解決プロセスに焦点をあてながら明らかにすることである。予想外の技術発展に注目した研究はいくつか存在するが、どのようなプロセスで予想外の発展が成し遂げられたのか、また限界が予測できない理由は何かという問題をミクロな視点から分析したものはほとんどない。本研究は、こうした予想外の技術発展が起き続けている半導体の露光装置産業を対象にこの問題にアプローチしている。 今年度(平成30年度)は、聞き取り調査や技術関連資料(技術論文や特許など)をもとに、露光装置産業の発展過程を明らかにし、上記の問いに対する仮説を導出した。聞き取り調査では、半導体露光装置開発、半導体製造にそれぞれ関わっていた主要人物にアプローチし、予想外の技術発展が起きた当時の環境や開発者の認識を明らかにした。技術課題をいかにして解決したのかなどを尋ね、予想外の発展に結びついた技術が登場した背景や限界を予測した理由などの情報を得ることができた。技術関連資料では、在外研究先の大学から幅広い資料にアクセスすることができたため、技術に関する主要論文の特定とその内容、技術間のつながりを知ることができた。 これらの調査、分析をもとに基礎的な仮説を構築した。中間成果は現在論文にまとめているが、露光装置産業では予想を超えた技術発展が大きく三度起きていること、これら予想を超えるイノベーションには共通のパターンが見られること、専門家の予想を困難にさせる構造的な理由が存在することが明らかになった。 本研究から得られる知見は、将来の技術予測やそれをもとにした研究開発投資、研究開発マネジメントに役立つと考えられる。今後は、仮説の検証、一般化可能性の検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前計画では、今年度(平成30年度)は情報収集に焦点をあて、次年度に仮説の構築を行う予定であった。だが、在外研究の機会を得て、研究時間が十分にとれたこと、幅広い資料にアクセスすることができたことから、情報収集が計画より早く進み、仮説の構築を今年度に前倒しすることができた。また、当時の研究開発に携わっていた主要人物数人に聞き取り調査を実施することができたため、露光装置とそれに関連する産業の開発の全体像について精度の高い情報を入手することができた。これらの調査により、上記の実績の概要で記した知見を生み出すことができた。 一方で、仮説の検証には、さらなる聞き取り調査の実施や技術情報の分析を含む、網羅的な情報収集とその整理が今後必要である。また、来年度初頭に中間発表を行うことは決定しているものの、今年度の成果公表には至らなかった。以上を踏まえて、進捗状況を「おおむね順調」であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、主要人物への聞き取り調査や技術論文などをもとに基礎的な仮説を構築したが、検証のために必要なデータや資料は不足している。そこで次年度は、仮説の検証に必要なデータを集め、仮説の精緻化、または仮説の修正を行う。具体的には、(1)当時の研究開発にかかわっていた国内外の研究開発者への聞き取り調査の実施、(2)特許や技術論文の収集と整理、(3)関連する既存研究の整理を行うことを予定している。また、これまでの知見を中間成果としてまとめて国際学会で発表し、そこでのフィードバックをもとにさらに研究を発展させていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初関西で予定していた聞き取り調査を関東近郊で実施することが可能であったため、宿泊費の支出が不要となった。残額は次年度のデータ収集に使う予定である。
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