2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K12861
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Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
小林 英夫 多摩大学, 経営情報学部, 教授 (40710083)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 創業者・滑業家関係 / シリコンバレー・人材供給エコシステム / 事業環境変化・滑業家関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンチャーにおける滑業家の概念の精緻化に向けて、未上場ながら急成長しているベンチャーにおけるインタビュー調査や対象範囲を広げた事例調査を行った。計画では一定期間ベンチャー企業に内在させていただき参与観察を行う予定であったが、予定企業の経営環境の変化によりインタビュー調査に変更した。 一方で、事例研究の対象を広げるとともに、労務環境や人材の繋がり方、情報発信方法、ベンチャーの主要EXIT手段等の環境変化が、滑業家の調達や存在に与える影響についても分析の幅を広げた。2018年度のシリコンバレーでの調査結果を踏まえ、GAFAの巨大企業化がシリコンバレーの人材供給エコシステムにもたらしている変化についても分析を進めた。 結果として、米国では滑業家と呼べるような人材は見出しにくかったものの、日本と同様に滑業家と呼べるような動きをする人材が全く存在しないわけではなかった。但し、滑業家の存在は雇用慣行や外部労働市場の活性度の違い、VC等の人材仲介者の存在に大きく影響を受けており、担う機能の多様性や役割変化の柔軟性には違いがあった。また、近年のリーン・スタートアップの一般化やアクセレレーターの発展に見られる起業活動の変化、IPOよりも買収されることによりEXITが遥に一般的になっているという環境変化により、滑業家的存在は現れにくくなっていることが明らかとなった。 また、2018年度に著書「何がベンチャーを急成長させるのか」が日本ベンチャー学会清成忠男賞と商工総合研究所中小企業研究奨励賞を受賞し多くの人にお読みいただき、実際にベンチャー企業に勤務している人物や経営者より共感の意見を多数いただいた。それにより、これまで明確な理論や存在として定義されていなかった「滑業家」という概念が、実務者にとって納得感を持ち受け入れられ得るものだという自信につながるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたリサーチサイト(参与観察予定のベンチャー企業)の経営環境が上場準備等により変化し、長期内在型の参与観察ができずインタビュー調査に留まった。このため、調査対象範囲を広げて研究を行った結果、これまでの研究を補完する発見を得られたものの、主張を裏付けるだけの分厚い記述をもたらすだけの研究の深みに至っていないと認識しているため。 また、2020年度に2018年度のシリコンバレーの訪問調査のフォローアップ調査等を予定しているが、COVID-19の問題発生により国内外での訪問・対面による調査研究が著しく困難になることが危惧されており、その課題に対する解決策も模索段階に留まっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度調査から2年を経てシリコンバレーの最新動向に関する現地調査を予定しているが、COVID-19問題により実施は不透明である。また、日本国内においても実地調査やインタビュー調査の実施はこれまでよりも困難となることが懸念されている。このため、先行研究を改めて厚くすることによって新たな知見につながる土台を固めるとともに、可能な限りの情報収集と事例調査を行いたい。 また、滑業家の概念は、ベンチャーの急成長に伴う環境変化に柔軟に対応する人材に対応したものであるが、COVID-19による未曽有の危機的状況への対応は未知の機能や状況に企業が柔軟に対応するための人的資源という観点で、滑業家の有用性に通じるものがあるのではないかとも考えられる。このため実践的含意を意識しつつ、最新の社会状況を注視しながら研究に取り込むことを柔軟に行うものとする。
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Causes of Carryover |
企業に内在しての参与観察の実施とそれに関わる協力費等の発生を想定していたが、内在型の参与観察が行えず、インタビュー調査や事例研究調査に留まったため、今年度予定していた研究費を使用しなかった。この代替として、次年度は、再度の海外調査と国内調査(COVID-19が落ち着いた場合)、学会発表等を行い、研究活動を進める。尚、今年度についても、研究費支出有無に関わらず研究活動は中断していない。
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