2019 Fiscal Year Research-status Report
ワーク・ライフ・バランス支援制度による従業員のアイデンティティ形成に関する研究
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18K12863
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
櫻井 雅充 中京大学, 経営学部, 准教授 (50633369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ワーク・ライフ・バランス / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ワーク・ライフ・バランス支援制度が従業員の仕事と生活におけるアイデンティティ形成に及ぼす影響について明らかにすることを目的としている。具体的には,①ワーク・ライフ・バランス支援制度と従業員のアイデンティティ形成の関係についての理論的研究と,②ワーク・ライフ・バランス支援制度の導入事例を対象とした経験的研究を同時並行で実施するものである。 以上の目的に沿って,研究2年目にあたる令和元年度は②の経験的研究を中心に研究を実施した。第1に,Z市役所における男性職員による育児休業取得についての定性的調査である。ワーク・ライフ・バランス支援に積極的な自治体として知られるZ市役所において育児休業を取得した男性職員を対象としてインタビュー調査を実施し,得られたデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した。そして,分析結果について,2019年6月に開催された日本労務学会第49回大会において「男性による育児休業取得の効果」と題して報告した。 第2に,α社の生産計画部署における女性従業員についての定性的調査である。女性従業員にとって一連のキャリアを通じて経験される職務・雇用形態とワーク・ライフ・バランスについて,α社の生産計画部署に勤める3名の女性従業員を対象としてインタビュー調査を実施した。3名はそれぞれ異なる職務・雇用形態を経験しており,それらとワーク・ライフ・バランス支援の関係について分析した。分析結果については,2019年12月発行の『中京企業研究』第41号に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の調査先から十分な協力を得ることができたため,順調に経験的研究を進めることができている。また,次年度に向けた新たな調査にも着手することができ,経験的研究に関しては当初の計画以上に進展していると言える。 一方で,当初の計画以上に調査に多くの時間を費やすことになったために,ワーク・ライフ・バランス支援制度が従業員の仕事と生活におけるアイデンティティ形成に及ぼす影響についての総論的な枠組みの構築には至っておらず,理論的研究は計画通りには進展していない。とは言え,男性育児休業取得者や製造業における女性従業員など,個別の対象に準じた理論的枠組みの構築は当初の計画以上に進展しており,これらを取りまとめて総論的な枠組みを構築することが可能な状況となっている。 以上より,当初計画していた演繹的な研究としてではなく,帰納的な研究としてこれまでの進捗状況を捉えれば,本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度以降の②経験的研究については,製造現場における女性従業員やトラックドライバーを対象として,それぞれのワーク・ライフ・バランスとアイデンティティ形成の関係について調査・分析を進める予定である。 ①理論的研究については,上記の調査におけるそれぞれの対象に準じた分析枠組みを構築し,それらを最終年度に総論的な枠組みとして提示するための準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初の計画では年3回の研究会への参加を予定していたが,令和元年度は1回の開催となったために計上していた研究会への参加旅費が余ることになった。その残額は文献購入費や調査旅費に充当することができたものの,少額の次年度使用額が生じることになった。未使用分に関しては,令和2年度の研究会および学会への参加旅費に充てる予定である。
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