2020 Fiscal Year Research-status Report
ワーク・ライフ・バランス支援制度による従業員のアイデンティティ形成に関する研究
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18K12863
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
櫻井 雅充 中京大学, 経営学部, 准教授 (50633369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ワーク・ライフ・バランス / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ワーク・ライフ・バランス支援制度が従業員の仕事と生活におけるアイデンティティ形成に及ぼす影響について,①理論的研究と,②経験的研究を同時並行で実施するものである。 研究3年目にあたる令和2年度は以下の通りに研究を実施した。まず,②経験的研究として,第1に,運送業A社における従業員のアイデンティティ志向性と人事制度やワーク・ライフ・バランス経営に対する知覚に関する定量的調査を実施した。その分析結果について,2020年7月に開催された日本労務学会第50回大会において「働き方に関する施策の知覚が従業員の心理に与える影響:トラックドライバーのアイデンティティ志向性に着目して」と題して報告した。 第2に,トヨタ紡織株式会社における女性従業員のための専用工程の設置・運営に関する定性的調査として,女性専用工程で働く女性従業員を対象としたインタビュー調査を実施した。分析結果については,2020年9月発行の『中京経営研究』第30巻第1号に掲載した。 次に,①理論的研究によって構築された枠組みに基づいた従業員のアイデンティティ形成の分析として,第1に,男性育児休業取得者のアイデンティティ形成についての分析を行った。分析結果については,2020年11月発行の『変わろうとする組織 変わりゆく働く女性たち:学際的アプローチから見据える共幸の未来』の第3章として掲載した。 第2に,現代日本の組織における従業員が,人材および生活者としてのアイデンティティを形成するプロセスについての分析を行った。その分析結果について,2021年3月に『人材マネジメントとアイデンティティ:従業員の人材化とワーク・ライフ・バランス』と題した書籍を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の調査先から十分な協力を得ることができたため,本研究として計画していた調査を予定通りに進めることができている。これにより,経験的研究に関しては,当初の計画通りに進展することができたと言える。 理論的研究に関しても,当初は予定していなかった書籍の出版が可能になったことにより,昨年度の課題であった総論的な理論的枠組みの構築にも取り組むことができた。こちらに関しても,計画通りに進展できている。 以上より,本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画最終年度である令和3年度の研究に関しては,本研究から得られたワーク・ライフ・バランス支援制度のもとでの様々な従業員のアイデンティティ形成に関して,その位置づけを明確化する。 具体的には,本研究において実施した①理論的研究と②経験的研究を踏まえて,総論的な枠組みを構築し,今後の研究に向けた課題を整理する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では研究会・調査・国内学会のための旅費を計上していたが,新型コロナウイルス感染症の影響によりそれらがすべて中止もしくはオンライン開催へと変更になったことから,旅費が大幅に余ることになった。その残額はオンライン学会・研究会への参加のためのパソコン等の購入費に充当することができたものの,少額の次年度使用額が生じることになった。未使用分に関しては,令和3年度の文献購入費等に充てる予定である。
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