2018 Fiscal Year Research-status Report
地銀統合データベースを用いた実務利用可能な高精度LGD推定モデルの開発
Project/Area Number |
18K12873
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田上 悠太 早稲田大学, 商学学術院(ビジネス・ファイナンス研究センター), 助教 (60805050)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 信用リスク / 変数選択 / デフォルト時損失率 |
Outline of Annual Research Achievements |
バーゼル規制は、国際的な金融システムの健全性の強化を目的にした銀行に対しての規制である。バーゼル規制では、各銀行に対して信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクなど様々なリスクを推定し、それに備えた自己資本を用意することを義務付けている。信用リスク(銀行の貸付債権から生じる損失)は銀行の抱えるリスクの大部分を占めており、その正確な推定が求められている。信用リスクは大きく、デフォルト率、デフォルト時損失率、デフォルト時貸出額の3つのファクターによって構成されている。本研究では、デフォルト時損失率(貸出に占める損失の割合)推定モデルの精度向上のための研究を行った。具体的には、1.景気、マクロ経済変動がデフォルト時損失率に与える影響について研究し、2.データベースに含まれる大量の説明変数の中から、モデル推定精度の向上に有効な説明変数の特定を行う研究を行った。 1に関して。海外の先行研究では、デフォルト時時損失率が景気、マクロ経済変動の影響を受けることが指摘されている。また、バーゼル規制でもその影響を考慮することが義務付けられている。しかし、日本の銀行貸出債権のデフォルト時損失率が景気、マクロ経済の変動から受ける影響に関しては分析が行われてこなかった。そこで、日本の銀行貸出債権のデータを用いてデフォルト時損失率に景気、マクロ経済変動が及ぼす影響について分析を行った。 2に関して。銀行貸出債権には付随する大量の情報がある。例えば、財務情報、マクロ経済情報、業種、地域などである。これらの大量の情報の中から、デフォルト時損失率推定モデルを作成する際に用いる変数特定方法に関して理論的な研究を行った。具体的には、符号制約と言う制約をつけたときの説明変数の特定方法に関しての理論的な特性に関しての知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体の計画では、本年度中にパイロットモデルとなるLGD推定モデルの構築を予定していた。しかし、マクロ経済とLGDの関係に関しての検証が遅れてしまったため、パイロットモデルの構築まで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえて、また、新しいモデルを追加し、比較することでパイロットモデルの完成をまずは目指す。そして、実際のデータに対してパイロットモデルを適用することで、推定精度、問題点、運用上の課題を明らかにする。それらを踏まえて、パイロットモデルの改良、推定精度向上を達成していく。また、これらに加えて、損失の条件付き分布、同時分布の関しての理論的な研究を行っていく予定である。そしてこれらの成果の英文での論文化、学会での発表等を通じての社会還元を目標とする。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の遅れにより、予定していた学会発表費、物品購入、英文校正費等を用いなかったためである。
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