2021 Fiscal Year Research-status Report
消費者間のクチコミ行動と企業間の推奨行動における制御焦点の効果
Project/Area Number |
18K12883
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菊盛 真衣 立命館大学, 経営学部, 准教授 (20778948)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クチコミ / レファレンス / 企業間推奨 / 制御焦点 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、制御焦点理論という消費者行動研究において近年注目されているアプローチを援用して、制御焦点が、消費者のクチコミ受信・発信行動、および、企業間の推奨行動に及ぼす影響を解明することである。本プロジェクトにとって第4年度にあたる令和3年度においては、本プロジェクトの第3の研究課題であるサプライヤーに関する推奨の正負比率と制御焦点が受信企業に及ぼす影響の分析に関連して、既存研究の知見を整理した。具体的には、欧州の研究者が中心となって用いているシステマティックレビューの手法を用いて、既存研究が使用するメソッドを限定せずに、企業間のクチコミないし推奨を対象とする定量的・定性的・概念的な研究の知見を幅広く体系化することができた。システマティックレビューの結果、B2Bマーケティングにおけるクチコミ研究は、Industrial Marketing ManagementやJournal of Business & Industrial MarketingといったB2Bマーケティング専門誌をはじめ、マーケティング一般誌においても幅広く展開されてきたということ、クチコミ発信、クチコミ受信、および、レファレンスマーケティングという3つのテーマの下で潮流が形成されているということ、各潮流の基で企業内外のクチコミに関する興味深い研究知見を産出してきたということを見出した。一方で既存研究には改善されるべき問題点を抱えているということも明らかにされた。具体的には、サプライヤーに関する推奨の正負比率に露出した受信企業は、当該企業の心理的状況によって、その評価が変化するということは示唆されているものの、制御焦点の効果については検討されていないということが明らかにされた。なお、今年度はライフイベントの発生を理由として、2021年9月から11月初旬までの約2か月の間に研究活動を一時的に中断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画の本プロジェクトにおける第4年度においては、前年度に実証分析を実施したインセンティブとeクチコミ発信行動の関係に関する研究成果を論文にまとめ、査読付き学術雑誌への投稿準備を行っている。加えて、企業間のクチコミ活動ないし推奨行動についての既存文献の収集およびシステマティックレビューを実施し、その成果について国内の学会で研究報告を行った。学会では有用なコメントを得ることができ、そのコメントを反映させて研究の改善を図った。その研究成果を論文にまとめて、海外の査読付き学術雑誌にて投稿し、査読のプロセスが進行中である。同時に、企業間のクチコミ活動と制御焦点に関する実証研究を行うために、昨年に続いて、実務の現場におけるクチコミないし推奨の活用事例について調査することを目的とする企業インタビューを行い、研究の具体的な仮説の構想を立てている。これらのことから、本プロジェクトの進捗状況は当初の計画通りに進展していると判断されるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトは、第4年度も計画どおりに進展しており、一定の研究成果を挙げてきていると判断できるものの、研究活動の中断を挟んだことから、今後はやや早いペースで研究活動を実施する予定である。プロジェクト最終年度にあたる5年目の研究計画として、まずは、本プロジェクトの第3の研究課題である、サプライヤー推奨と制御焦点の影響に関する実証研究を中心的に取り組みたい。具体的には、制御焦点理論を用いて、サプライヤーに関する企業間のクチコミ発信行動がどのような条件で促進されるのかを検討する。つまり、促進焦点の企業か予防焦点の企業によって、クチコミ発信行動に違いがあるのかどうか、さらに、発信されるクチコミの内容に違いがあるのかどうかを調査する。当初からの計画どおり、関連研究のレビューおよび事前のインタビュー調査を通じて得られた知見に基づいて、概念モデルを構築したのち、サプライヤーの推奨行動に関する企業調査を実施し、実証分析を行いたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、研究活動の中断期間があったことと、当初の計画よりも、研究成果発表に伴う国内旅費および外国旅費が大幅に抑えられたことによるものである。これについては、現在着手している研究を大きく進展させるために実施予定である企業に対する大規模な質問紙調査を実施するための費用に使用することを計画している。
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