2018 Fiscal Year Research-status Report
マネジメント・コントロールシステムの活用に経営上層部の自由裁量が与える影響の研究
Project/Area Number |
18K12889
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
尻無濱 芳崇 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (20728331)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自由裁量 / 上層部理論 / 公立病院 / 病院経営 / 管理会計 / 会計知識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、当初の計画通り医療機関、その中でも経営者の自由裁量が制限されることが多い公立病院に注目し、公立病院経営者を対象にインタビューを行った。インタビュー先を紹介してくださる協力者(公立病院経営者)が現れ、予想以上にインタビューが順調に進んだ。また、当初は2019年度に行う予定であった質問票作成も、インタビュー数が増えインタビュー結果をもとに質問票作成を行うことも可能だと判断し、前倒しで行った。アンケート調査の結果、自由記述欄から公立病院経営者が自由裁量を制限された具体的な事例を数多く知ることができ、また自由裁量を制限する様々な要素について定量的に分析することができた。 アンケート調査後、アンケート回答者のうちインタビューにも協力する旨申し出てくださった方に対し、追加でインタビューを行った。日本全国の公立病院にインタビューを行い、2018年度だけで40件程度のインタビューを実施できた。その結果、公立病院経営者の裁量を制限する要因について理解が深まった。公立病院経営者の中には、裁量が少ないとされる地方公営企業法の一部適用病院の院長であっても十分な裁量を持ち、経営改革を行うことができている者もいた。その一方で、相対的に裁量が大きいはずの地方公営企業法全部適用の事業管理者でありながらも、首長や議会、本庁事務方、院内事務方などから自由裁量を制限され、本来ならできるはずの経営改革を十分行うことができていない経営者もいた。さらに、公立病院経営者の多くは経営に関する専門的な知識を体系的に身に着ける機会が少なく、経営に関する知識(例えば会計知識)に自信がない中で経営を行っているケースが多いことも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、2018年度はインタビューのみを行う予定であったところ、質問票作成・質問票調査まで実施できた。さらに、インタビューの数も当初予定していたよりもはるかに多く行うことができ、公立病院経営者の裁量が制限される要因についての理解が深まった。実質的に2019年度に予定していた研究についてもかなりの部分進めることができたため、当初の計画以上に研究が進展したということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
公立病院経営者の自由裁量とその制限要因についてはかなり理解が深まったが、インタビューに応じてくださる方がまだ数名おられるので、引き続きインタビューを実施する。インタビュー結果を分析し、論文執筆・学会発表・投稿を行う。また、定量的研究についても、まずは質問票調査データに基づいた記述統計ベースの実態報告論文を執筆・投稿する。それに加えて、各病院が公表している財務データ・非財務データを収集し、質問票調査データと結び付け、仮説検証型の精緻な分析を実施し、国内外の研究会・学会での報告を目指す。
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