2018 Fiscal Year Research-status Report
accrual accounting for local government budgeteers: Evidence from Experimental and Empirical Study
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18K12893
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
黒木 淳 横浜市立大学, 国際総合科学部(八景キャンパス), 准教授 (00736689)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公会計 / 質問紙実験 / 予算編成 / 予算要求 / 非財務指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方公会計の有用性は地方公会計をめぐる国際的な研究課題のひとつである。本研究は地方公会計の予算設定に対する有用性に着眼し、「前年度の予算を基準にしながら限界的に上積みできる金額を考える」 (Wildavsky 1964) という増分主義に対して、その抑制に公会計情報が機能しているか否かについて明らかにすることを目的とする。 増分主義は地方公共団体の部局のほか、独立行政法人や公的医療機関など、どこまで当てはめることが可能であるかについては実証しなければならない課題である (黒川 2013: 39-40)。 本年度は、地方公共団体や独立行政法人等を対象として、予算を首長に提案し、官僚のあいだで予算額の調整をおこなう予算設定者 (budgeteer) (Thurmaier 1991; 1992) が公会計情報を有用に用いることができるのかについて実験を行うための下準備を行った。 第1に、質問紙実験で用いる質問紙のバージョンアップを検討した。これまで会計学および行政管理学では、予算設定者と予算要求者という区分を用いず、両者のインセンティブを混同した議論が行われていた。両者のインセンティブ、とりわけ予算設定者について、均衡予算・報告という制度的なプレッシャーと、リスク感度の2点から説明をすることによって、予算増分に対する抑制がインセンティブとなっていることを明らかにした。 第2に、本研究はアーカイバル・データを用いた実証分析を組み合わせるという混合研究法を行いるが、本年度はe-Statを用いた地域データをデータベースとして完備するとともに、効果的なデータ取得に向けたコード開発を行った。さらに、地方公会計の一部分でもある独立行政法人財務データベースを構築した。次年度は地方公会計の構成要素をすべてデータベース化する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はに1,788地方公共団体の財務部/財務課担当者を対象とした質問紙実験を実施する予定であったが、プレ実験の担当者が2度行うことによる効果を避けるために、プレ実験から3年経過した令和元年度に実施することが適切であるという結論に至った。質問紙は事業別行政コストを報告するか否か、成果情報を報告するか否か、さらには成果情報の高低を定めた2×3の6つのトリートメントを設定し、都道府県・政令市・中核市・市・区・町・村ごとにランダムに6つの質問紙を分け実施する準備を整えている。 さらに、本研究の中核であるアーカイバル・データとの組み合わせという観点では、本年度はe-Statを用いた地域データをデータベースとして完備するとともに、効果的なデータ取得に向けたコード開発を行い、データを有効に用いることができる環境整備を行うことができた。とりわけ地方公会計の一部分でもある独立行政法人財務データベースを構築したことにより、多数の業績を報告することができる環境を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は次のとおりである。 ①質問紙実験の実施:本年度準備した質問紙を用いて、全国1,788の地方公共団体を対象とした実験を実施する。地方公共団体の業務が落ち着いている2019年8月~9月に実施予定であり、回収率は50%を見込んでいる。加えて、地方公共団体の関連諸機関であり、発生主義会計が導入されている独立行政法人と公的医療機関に対しても同様の実験を行い、増分主義の適用範囲についての解明をめざす。 ②予算データの整備:本研究を実現するうえでは地方公共団体の属性を統制することによって回答バイアスを調整する。とりわけ重要であるのはe-Statにも完備されていない予算データであり、事業者と協力のうえで全市町村の取得可能な予算データをすべて取得する。 ③成果報告:アメリカ会計学会やAnnual Conference of Management Accounting Research (ACMAR)などでフィードバックを得る。研究成果は会計学のトップジャーナルであるThe Accounting Review (TAR) のほか、Contemporary Accounting Research (CAR)、Management Accounting Research (MAR) に順次投稿する。また、研究方法論の提案は国内雑誌への掲載をめざす。
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Causes of Carryover |
質問紙実験の実施年度が実験の妥当性の観点から令和元年度にずれたため。本年度は独立基盤形成型科研費を頂くことができ、環境整備に特に力を入れた。
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Research Products
(5 results)