2018 Fiscal Year Research-status Report
The effect of accounting discretion on firms' credit ratings
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18K12895
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
古賀 裕也 東北学院大学, 経営学部, 講師 (40780383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 格付 / 利益マネジメント / 複数格付 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は日本の格付市場の特徴を踏まえ格付取得と利益調整行動との関係、その経済的帰結を実証的に検証することである。 一般的にBBB格以上の格付は投資適格、BB格以下の格付は投資不適格に区別される。投資不適格に区別された社債は流動性が著しく低下することから、社債発行企業にとって投資適格格付の取得は非常に重要である。 本年度の前半では、日本の格付市場の特徴について整理し、検証論点の明確化を行った。先行研究を整理したところ、日本においても投資適格格付を取得するインセンティブが強く存在することが明らかになった。しかし、日本における投資適格と投資不適格の区分については見解が分かれている。区分の元になった社債発行規則は、当初、無担保社債はA以上、担保付社債はBBB以上の格付の取得を求めていた。また、日本の特徴として単一格付を取得する企業が多数存在することがあげられる。そこで本研究は、日本の制度的特徴をふまえ、投資適格と投資不適格の区分に近い企業に着目し、顕著な利益調整行動が確認されるかを検証した。また、複数格付の取得が利益調整行動にどのような影響を与えるかを検証した。 検証の結果、A-とBBB+の格付が付与された企業は利益マネジメントを実施していることが確認された。また、複数格付がA-とBBB+の格付が付与された企業の利益マネジメントを抑制させることも発見した。 近年では、複数格付が格付の質を低下する可能性があることが主張されており、複数格付の効果について議論が分かれている。日本企業に着目することにより、単一格付と複数格付の差異をより明確に確認することができる。本研究成果は、投資適格と不適格の区分は制度的背景によって異なり得ること、また複数格付が格付の質を向上させる可能性があることを示唆しており、格付及び利益マネジメントの研究蓄積に貢献している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通りに研究を進展することができた。本年度の目標は、パイロットテストの実施及び結果に基づくワーキング・ペーパーの執筆であった。 パイロットテストに関しては、本年度の前半に研究課題の明確化とリサーチデザインの構築、本年度の後半からデータ収集を行い研究課題の検証を行うことが具体的な目標であった。計画通り、本年度の前半には研究課題とリサーチデザインを構築した。また、本年度の後半からデータベースを契約し、必要なデータを収集した。また、データを用いてパイロットテストを実施し、仮説と一貫した結果を得ることができた。 パイロットテスト実施後は、検証結果をまとめ、ワーキング・ペーパーを執筆した。本年度中にワーキング・ペーパーの執筆は完了し、執筆したペーパーは第42回EAA Annual Congressに投稿した。その結果、学会報告のアクセプトを得ることができた。 以上の理由から、本年度の計画通りに研究を進展することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は本年度に執筆したワーキング・ペーパーに基づいて学会報告を行い、学会でのコメントを反映し、研究成果の発展を目指すことを予定している。この計画通り、平成31年5月のEuropean Accounting Association 42th Annual Congressでの報告を予定している。学会報告のコメントを反映し、ワーキング・ペーパーを推敲する予定である。 令和2年度は当初の計画通り、本年度に執筆したワーキング・ペーパーを海外学術雑誌へ投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の研究費はデータベース利用料(月額払い)に充てている。想定よりも多くの費用が今年度に必要となったことから、本年度において研究費の前倒し請求を行った。これはデータベース利用料の支払いタイミングに起因するものである。その結果、差額分が発生した。差額分は引き続き次年度のデータベース利用料に使用する。
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