2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on risk information disclosure effect in emergency
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18K12903
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
野田 健太郎 立教大学, 観光学部, 教授 (80735027)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ESG / CSR / リスクマネジメント / 環境 / 社会性 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
企業のリスク情報に対して、ESGの情報を中心に整理を行った。環境、社会性、ガバナンスの観点から企業の取り組み状況を整理し、企業のライフサイクルとの関係を総合評価だけでなく、環境、社会性、ガバナンスのそれぞれの分野においても整理した。昨年度、これらの研究結果を国内外の学会等で発表したが、そうした学会等での議論や指摘を踏まえ、内容を精緻化し、今年度、3本の論文として公表することができた。 その中で、ESGに関する情報の開示には、企業のライフサイクルだけでなく、機関投資家、金融機関、経営者など企業の株主構成が大きな影響を与えていることが示された。特に、経営者に関しては、近時企業のオーナーシップの位置づけが議論されている。創業者が企業においてリーダーシップを発揮している間は求心力が強いが、企業が成長した段階では、次第に創業者を中心とした求心力が低下する可能性がある。近時、年功序列の労働形態が徐々に失われ、多様な労働形態が出現する中で、ESGへの取り組みが創業者のオーナーシップに代わるものとして、その必要性を増してくることが考えられる。従ってESGへの取り組みとその開示は、投資家へのアピールはもちろんのこと、社内へのアピールになるという側面も大きくなる可能性が示唆された。 さらに学会等での議論を通じ、ESGが経営者の業績予想精度やアナリストの予想精度に与える影響について分析するきっかけを得られた。こうした研究を進めることで、ESG開示企業の特徴だけでなく、具体的な開示効果についても示すことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ESGとライフサイクルの関係やESGの情報開示効果について、3本の論文等を公表することができた。一定の成果を出していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の3点について研究を進めていきたい。 1つ目は、ESGの開示内容と企業のライフサイクルに関して、平時だけでなく経済ショックや自然災害など有事との違いについても検討を進めたい。 2つ目は、日本企業の特徴を明らかにするため、アナリスト予想精度や経営者予想精度との関係を分析した上で、その理論的な枠組みをいっそう精緻にしていきたい。 3つ目は、資本コストとの関係の整理や開示と実態の差を分析することなどを通じ、ESGの開示効果の観点で分析を行う。 これらの分析から幅広いリスクへの対応を向上させる方策を探り、日本企業の競争力向上を目指す政策提言を行う。
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Causes of Carryover |
ESGを取り巻く最近の状況に関して、SDGs(持続可能な開発目標)の進展やTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)などの国際的な動きが本格化していることもあり、米国における在外研究を実施する予定にしたため。 次年度における使用計画として、大きな金額を占めるのは在外研究における滞在費や旅費である。それ以外としては、ESGやSDGsに関する最新のデータを今年度に引き続き入手する予定である。
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Research Products
(3 results)