2019 Fiscal Year Research-status Report
財務報告のリアルエフェクトと経営者の報酬契約に関する理論的研究
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18K12904
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
若林 利明 上智大学, 経済学部, 助教 (80705666)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自発的開示 / 決算短信の簡素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ディスクロージャーの課題と業績評価の課題の両方に取り組んだ。業績評価のモデルは、昨年度から引き続き実施しているテーマである。新たに取り組み始めた、ディスクロージャーの課題は、具体的には、次のとおりである。2017年2月、東京証券取引所は、「決算短信様式・作成要領」および「四半期決算短信様式・作成要領」の見直しを行った。当該見直しにより記載内容の自由度が高まり、必要に応じて企業は記載内容を従前より簡素化できる。一方で、アナリストや投資家からはこれによって会社にとって都合いい数値だけを選択的に開示するのではないかという懸念も寄せられている。 では、決算短信の記載内容の自由度が高まると、経営者はどのような場合にどのような情報を開示するようになるのであろうか?本年度は、以下の3つの観点から検討した。 第1にDye(1985)およびJung and Kwon(1988)の情報偏在モデル、それを正規分布のケースに適用したPenno(1997)およびそれにリスク回避性を導入した Dye and Hughes(2018)のモデルを検討した。決算短信の簡素化の目的の1つは、適時開示の強化である。しかし速報としての役割を高めようとするにつれて、開示決定時点で経営者情報を有していない確率は高まると解釈することもできるからである。 第2に、Einhorn (2005) のモデルに依拠して開示要請項目の存在が任意開示項目の開示戦略にいかなる影響を及ぼすかを検討した。決算短信の簡素化は、義務的な記載事項及び記載を要請する事項を可能な限り減らすことにより,それぞれの企業の状況に応じた開示を可能とするからである。 第3に、Heinle and Hofmann(2011)に依拠して、ソフト情報の追加開示がプリンシパル(既存株主)にとって有益か否かを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、4回の国際学会報告と2回の国内学会報告を行った。有益な意見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、昨年度と今年度の成果を合わせて、リアルエフェクトのモデルを展開していく。研究成果は、国際学会において報告予定であるが、欧米を中心に新型コロナウイルスが猛威を振るっており、実現できるかは不確実である。
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Causes of Carryover |
来年度、国際学会で4回報告予定であったので、その旅費として充当するつもりであった。ただ、コロナの影響で予定通り執行できるかどうかは不確実である。
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